PDE Inter-Universityニューズレター:第十一号(2005年9月15日) "Inter-University学術活動の新風:時代と学術と友情”
1.時代
地球上の人類はごく最近、全く新しい時代に突入した様であります。その時代の分水嶺は9・11であります。その原因や真相は世界の識者が只今鋭意激論致しておりますので、我々もそれに傾聴して参りたく存じます。しかし、いずれにいたしましても、時代は重要な二者択一を我々人類につきつけております。それは、「あなたはあなたの隣人の未来を潰すことによってあなた自身の未来を獲得しようとしているのか、それともあなたの隣人の未来を生かすことによってそれを望んでいるのか」という二者択一であります。前者が、9・11と共に我々の時代の基調になったかのようであります。この観点からするならば、我々の時代は「お互いの未来潰しの時代」と呼んでも宜しいでしょう。その結果は、誰にも未来はない、という荒涼たる世界です。
2.学術
これに反して、もしも我々が、お互いの未来を生かす選択をした場合は如何でしょうか。我々は未来より「人類への大いなる癒し」が到来するのを経験することでありましょう。これを私は「未来セラピー」と呼びたいと思います。この「PDE Inter-Universityニューズレター」を始めました時、我々の願いは「Peace and Dialogue on Earth」(地には平和と対話あれ:ルカ福音書2章14節)という天使達のクリスマス・メッセージに沿うものでありました。
この願いを、しかし、我々はInternet時代に相応しく、「大学と大学の《あいだ》の広大な社会空間の中に活動する学術世界」(つまり、Inter-University)としてInternetを媒介にして実現することを求めるわけであります。これが、時代の危機を前にしての我々の全く新しい学術手段であります。すなわち、我々の志向するのは、学術におけるInternet民主主義でありまして、これは《Inter-Universityという形》において具現いたします。この形を、既存の学術形態(大学を含む)が尊重し、そのために貢献奉仕する精神を発揮する時、学術は21世紀に相応しい、地域的=地球的二重性をはじめて有意義に確立することでしょう。(注:講義なども、教室でのそれとInter-University上のon-line講義録と、二重化し、かつDVDなどの音声映像でrepeatableとなります。)
さて、右に述べましたInternet民主主義は、丁度16世紀のマルティン・ルターの宗教改革が、ヴィッテンベルクの城教会の扉に「贖宥に関する95箇条の提題」を張り出すことで始まりましたように、又ルター訳の旧新約聖書をヨハン・グーテンベルクが活版印刷術を開発して印刷頒布するに及んでさらに展開いたしましたように、いや、それを遥かに凌駕するスピードと波及効果をもって、驚天動地の伸張を示すことが予見されなければなりません。まだ実現せぬ、しかし実現しうる未来を予見する力が、真の学術の力であります。
3.友情
ここに現出する人と人との繋がりは、あくまでも直接的にして広範、個別的にして人類的でありまして、これを我々は敢えてe-friendshipと名付けます。
直接的と申しますのは、如何なる情実、圧力、馴れ合いにも妨げられないからであります。広範なのは、そして人類的なのは、Internetの地球的特質でありまして、この新時代の文明の利器こそ、一切の強権、独裁、圧政、軍事的支配に対するcounter-balanceであることを知る人ぞ知るのであります。我々は、今始まっている「9・11」以来の地球争奪戦を、こうして相対化せねばなりません。その合言葉は、「Internet+友情=e-friendship」であります。
この合言葉を交し合う時、Internetは初めて「自由の機関」であることを十全に発揮するのであります。今日どのような組織、団体、共同体におきましても、Internetによる情報公開が「自由の基準」となっておりますが、竿頭さらに一歩(注:「+友情」)を進めるべきであります。これを逆に見ますと、イエス以来の友情の徳が、e-friendshipと言う新しい布袋に入れられる時、21世紀において国際的、学際的、宗際的パワーとなるわけでありまして、イエスの仰る「新しい酒は新しい布袋に入れよ」との命法が実行されることとなります。「文明に不可欠な冒険心」(ホワイトヘッド)の発揮であります。
4.その一例:「出版助成の会」の呼びかけ
以下に掲げます「出版助成の会」の呼びかけは、右の三点にわたる「PDE Inter-Universityニューズレター」の趣旨に相応しい学術計画であることを願っております。学術出版に新しい時代が訪れました。それはInter−Universityによる「友情の連鎖」を根本精神かつ根本方法にするからであります。
呼びかけは、(1)代表:ご挨拶、(2)著者:ご挨拶と感謝(3)趣意書、(4)予約金申込書、(5)小野寺功先生の御書評のお便り、(6)友情の連鎖:十箇条、(7)推薦書、(8)出版概要書、(9)「対話論神学の地平――私の巡礼のなかから」目次、からなります。地球上の既知また未知の友人たちのご理解を心より深謝申し上げます。
今から始まるE-friendshipの世界の力動は、未知です。魅惑と期待に満ちて未知です。しかし、飛び込む時、動き出します。古池や 蛙飛び込む 水の音。
一人の友あらば、宇宙は波紋を描き大反響!
(文責:延原)
I.代表:ご挨拶
謹啓
盛夏の候、皆様にはますます御健勝・ご活躍のこととお慶び申し上げます。
このたび、突然の「ご挨拶」の送付、失礼いたします。私は、敬和学園大学の延原時行先生とは、同志社大学神学部の後輩で、ご縁あって現在まで40年あまり、私にとりまして稀有の「心友」であり、大切な「導師」のひとりでもあります。
延原時行先生につきまして改めてご紹介の必要もございませんが、1991年春、敬和学園大学の創立を機に、15年に及ぶ欧米での学究教授生活の拠点を越後・新発田の地に移され、大学でのお働きをベースに「世界を私の家にして」(賀川豊彦1938年著書名)、堅実着実なお仕事を積み重ねてはや14年が経過いたしました。
先生は、学問分野はもちろんその生活の形においても、常にバランスの取れた強靭な思索と行動力を発揮され、学生たちはもちろん新しく出会われる幅広い人々に、いつも大きな人格的息吹を伝え続けておられます。
とりわけ「仏教とキリスト教の対話」に関わる開拓的な研鑽を本格化させる中で、「延原宗教哲学」とでも名づくべき独創的な学問的貢献を果たしておられることは、周知のことでございます。くわえて21世紀を迎えた現在、最新の高著『地球時代の政治神学』(創言社)において、滝沢克己国家学とハタミ提唱の「文明の対話」学の可能性を解き明かして注目されたあと、先般発表された傑作「9・11とアメリカ・キリスト教平和思想」(『軍縮地球市民』創刊号、2005年6月)などの意欲作品は、益々その思索の充溢振りを感じさせられます。
ところで、延原先生の労作は既に『仏教的キリスト教の真理』(行路社)『至誠心の神学』(同)はじめ『地球時代の良寛』(考古堂)『ホワイトヘッドと西田哲学の<あいだ>』(法蔵館)など多数に及ぶなか、先生にとって生涯の使命として探求し続けてこられたライフワーク「新しいキリスト教弁証論」が、本年(2005年)の年頭に至って、ひとつの纏まりの時を迎え、完成原稿『対話論神学の地平―私の巡礼のなかから』が生み出されました。
別添の新著「目次」を御覧の通り、1960年代初頭青年期の開拓期から円熟期でもある現在までの、ひとりの探求者・表現者の「巡礼」のあとが彫琢され、格別の品格を備えた仕上がりとなっています。とりわけ本書の「はしがき」、「プロローグ」と「エピローグ」、そして<巡礼T:実存の深遠から><巡礼U:イエスとの出会い―関係性のあけぼの」><巡礼V:対話論神学の地平><巡礼W:地平を超えて>それぞれ冒頭の「ことば」などは、本論全体をいっそう浮き彫りにする内容豊かな珠玉の表現となっています。
この完成原稿を、延原先生の学生時代からの友人であられるエーザイ前会長・現取締役相談役・中井博雅氏が一読され、今回の新構想「延原時行出版助成の会」が発案されました。
そしてこの新構想実現に向けて大きな力となり、確かな支えとなられたのは、延原先生が日ごろ尊敬され、深い学問的交流のある清泉女子大学名誉教授・小野寺功先生でした。完成原稿を一読されたあと、延原先生のもとに届けられた「小野寺書簡」は、著者である延原先生にとって、誠に大きな激励となりバネとなって、私たちの「助成の会」誕生を促す重要な契機となりました。
その後次々と「対話論神学の地平」に連動した新しい夢も膨らみ、生来の「プロジェクト人間」である延原先生からは、さらに別添のような新提唱「友情の連鎖―地平の会の組織論および出版助成の会の方法について」までもが生み出されるに至りました。
そして別添「趣意書」にあげましたような馴染みの方々で、「助成の会」の「発起人」を構成し、その代表に小野寺先生が決められていました。舞台裏のことではございますが、急遽小野寺先生のご意向で、先生は顧問に、代表に私をご指名になりました。ご相談の結果、小野寺先生にはより高所にたってご指導を仰ぎ、会の実質的な大黒柱の顧問ということで、「裏方の代表」の意味合いで、全くその柄ではございませんが、快諾させていただくことになりました。
こうして、延原先生の完成原稿を手元にしてからはや半年以上が経過いたしましたが、この時間の経過は、誠に貴重な日々でありました。
このたび機が熟しまして、正式に「延原時行出版助成の会」誕生の運びとなりました。そして今回の著作を仕上げていただく出版元を、小野寺先生の多くの見事な著作を刊行してこられた「春風社」と折衝することに決め、このたび別添の「出版概要書」を作成していただくことができました。
この「出版概要書」を踏まえて「趣意書」並びに「予約申込書」「推薦書」等が出来上がっております。ただし、御覧の通り、すべての連絡先が著者ご本人のところに集中し、本来ですと裏方作業を「裏方の代表」の方で引き受けるべきところですが、諸般の事情と、今後の会の展開などを勘案して、ご提示のような形でスタートすることになりました。
以上、誠に言葉足らずで、要領を得ない「ご挨拶」となりました。私たち発起人の意のあるところを御汲み取りいただき、まずは、新著『対話論神学の地平−私の巡礼のなかから』の刊行が、予定通り順調に、目出度く完成にこぎつけることができますまで、発起人一同、思いをひとつにして、努力してまいりたく存じます。
何卒、皆様のご高配とご協力、重ねてお願い申し上げ、発起人代表のご挨拶とさせていただきます。
謹白
2005年8月1日
「延原時行出版助成の会」世話人代表
鳥飼 慶陽 |