PDE Inter-Universityニューズレター13号:2006年3月20日
本号は、第十四回国際哲学オリンピック(IPO)
イタリア大会日本代表国内予選の結果を発表させていただきます――編集者。
第14回 国際哲学オリンピック(IPO)
予選の結果について
今回は全国から27人が、英語で哲学エッセイの力作を寄せて下さり、その若々しい意欲に感動を覚えつつ委員会は慎重かつ厳密に審査しました。その結果、日本代表選手として次の二人を選びました。
- 益吉 伸夫君(関西創価高等学校2年)
- 久次米 亮君(同志社国際中学校3年)
両君には5月15日から18日にわたって、イタリアのカラブリア大学(Cosenza)で開催される、第14回国際哲学オリンピック(IPO)に出席して頂きます。この大会には委員長の北垣宗治と、委員の林貴啓が共に出席してアドヴァイザーを務めます。なお、補欠として、木崎哲郎君(創価高等学校2年)を指名させて頂きます。
IPOは高校生の哲学エッセイ・コンテストです。従って日本委員会では応募資格を中学3年から高校2年までとしています。第15回IPOは2007年5月にトルコで開催される予定です。その国内予選の詳細については後ほど発表いたしますので、奮って応募してくださるよう期待いたします。
2006年3月16日
国際哲学オリンピック(IPO)日本委員会
委 員 長 北垣宗治
事 務 局 長 延原時行
委 員 林 貴啓
IPO国内委員会
957―8585 新発田市富塚1270
敬和学園大学延原研究室内 日本IPO事務局
(TEL.0254―26―3636)
備考:上記二名の日本代表を第十四回IPOイタリア大会に送るに当って、日本の高校生諸君に「哲学の心得」をここで一言述べて、激励の言葉とさせていただきます。
日本の高校生諸君(今回選ばれてイタリア大会に臨む諸君、また多くの未知の向学者の皆さん)に是非、プラトンの『ソークラテースの弁明・クリトーン・パイドーン』(田中美知太郎・池田美恵共訳、新潮文庫)を読んで欲しいと思います。哲学的思索というものが、日本の高校生の内でも最も優れた人たちが考えるように、一つは世界の現状の知識、もう一つは対話の強調、といったところに尽きるものではなく、これらを批判的に高く飛翔する精神の運動であることが、ここには明瞭であるからです。
「感覚的で可視的なもの」と「叡智的で不可視的なもの」の区別、前者から後者への飛躍、それをソクラテスは「魂の解放」と言っております。これあるがために、彼は、毒杯をあえてあおる勇気、死を超える決断を持ったのでした。人生を現世的欲望と現世的覇権とだけ考えるアテネの政治に抗して、ですね。そしてこれが、その時以来、哲学の心なのです。ここから見れば、「感覚的で可視的なもの」への関係は、隷属としか見られません。そうした隷属状態から人間の魂(ないし人格)を解放するから、哲学を骨子とする学術は初めて「リベラル・アーツ」(解放する諸芸)と呼ばれることができるのです。
『国家の品格』の著者藤原正彦氏は、数学の中に美を認め、それを解放する力と見なしておられるようですが、精神は同じでしょう。
哲学エッセイは「これ」に触れなければならない。そう私は確信します。そうしたことがIPOの運動を通じて生徒諸君に浸透することを願っています。
(文責:延原) |