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PDE Inter-Universityニューズレター:第十五号
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PDE Inter-Universityニューズレター第15号:2006年12月25日:


“ある国際的学術機関の新方針”:

  最近、ある雑誌を見ていましたら、「残念ながら、日本の大学には国際的な視野がまったく欠け落ちています。それだけ高等教育改革が遅れているのです」と言う文字が目を惹きました(竹中平蔵、ビル・エモット「『2007年問題』の突破策!」Voice、2007年1月号、47頁)。「貴校のライバル校はどこですか」と質問してみると、日本では、ほとんど日本国内の大学の名が挙がる。早稲田大学に「ライバルは」と聞いたら「慶応義塾大学」というに違いない、というわけです。

  それはなぜか、ですね。大学を国際的な学術運動の中に位置付けていないからですよ――私に言わせれば。それを私はもう多年のあいだ「Inter-Universityの一環としての大学の自覚の必要」と言うことで強調してきました。でも、今の大学内の学部とか学科とかをいくらいじっても、この自覚は出てこない。

  欧米では、私がクレアモント神学院のなかに恩師ジョン・カブ教授と相談してEast―West Process Studies Project(東西プロセス研究プロジェクト)を考案して設置した時にすでに明らかに意識したように、学術の最先端は今では「センター」とか「プロジェクト」なんですよ。

  これには前提条件があります。@何か旗幟鮮明な哲学ないし思想を中心にすえること、Aそれの研究と実践の方向づけを趣意書に明確にうたうこと、Bそうすることによって世界の変革の明確なヴィジョンを打ち出して、この方向性の中で大学も位置付けなおすこと、の三つの心がまえは最低限必要です。

  私の場合は、EWPSPという一学術機関をクレアモントから新発田につれてきており、この機関そのものは国際プロセス・ネットワーク(IPN)の中で十分著名な働きを――1985以来もう21年間――して参りましたので、ここ数年の内にはそれを中心にして、我が生涯のライフワークの達成へと「出向から本務への」ギア・チェンジする幸いな時を迎えられそうであります。実に有難いことであります。一言はじめにご挨拶申上げます――主宰 延原時行。

East―West Process Studies Project?since 1985:
Toward a Global Service

(東西プロセス研究プロジェクト 創立1985年:グローバルな奉仕へ)
Director:Tokiyuki Nobuhara,, Ph.D. & D.Min.
tnbhara@cocoa.ocn.ne.jp

Professor of Philosopy/Theology and Chaplain:
Keiwa College
Jinshinkan Rm.113
Shibata, Niigata 957-8585 Japan
Phone: +81 254 26 3636
Fax: +81 254 26 3646
nobuhara@keiwa-c.ac.jp
www.keiwa-c.ac.jp/ipo/index.html

Advisory Board Ex Officio Member:
The Center for Process Studies, Claremont School of Theology
1325 N. College Ave., Claremont, CA 91711 U.S.A.
Phone: (909)321/621-330
Fax: (909)626-7062
www.ctr4process.org

Governing Board Member:
International Process Network
% Judith A. Jones, Associate Professor
Department of Philosophy, Collins Hall
Fordham University, Bronx NY 10458 U.S.A.
Phone: (718)817-3304
Fax: (718)817-3300
info@processnetwork.org
www.processnetwork.org

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はじめに:新しい時代の新しい活動の焦点

  EWPSPは、1985年米国クレアモント神学院内プロセス研究センター(CPS)内に設置され、1991年より主宰の転任により敬和学園大学延原研究室内に移動し、今日まで国際的活動を続けてまいりました。現在、CPSとの関係では、主宰はAdvisory Board Ex Officio Memberを務め、敬和学園大学研究紀要Bulletin of Keiwa CollegeとはJournal Exchangeを継続中。EWPSPは、新たに2001年より、International Process Network(IPN:国際プロセス・ネットワーク)の連携機関(Affiliated Institution)として新たな世界的位置づけを得たことに鑑み、「グローバルな奉仕へ」(Toward a Global Service)という方向付けを鮮明にいたしたく存じます。この方向づけは、この度、第六回国際ホワイトヘッド学会世界大会(於ザルツブルク大学、2006年7月3日−7日)において第七回大会:バンガローア、インド(2008年)、第八回大会:青森、日本(2010年)が決定したことに鑑み、ことに重要であります。

  主宰は、クレアモントにEWPSPの活動事務所を設置しつつ、1985年から1991年まで、アメリカ宗教学会(AAR)の中に、共同研究セミナー:Process Thought, the Nishida School of Buddhist Philosphy in Comparative Perspective(プロセス思想と西田学派仏教哲学−比較的視座から)を設置、Prof. Francis H. Cook, University of California at Riversideと共に座長を務めましたが、今回、ザルツブルク大会において、Section on Process-Nishida Studies (プロセス−西田学セクション)を設置、運営することにより、世界的な「プロセス−西田学」研究の第二ラウンドを成功裡に開始することになり、欣快至極であります。

  ここに、1985年の設置時の趣意書を再度明記すると共に、21世紀の新しい時代に望まれる新たな活動の焦点として、1.英文著執筆(5部作)、2.邦文著執筆(5部作)、3.出版された著書の宣伝販売の促進、4.必要に応じての海外国内講義講演の実施、5.プロセス―西田研究(Process-Nishida Studies)を中心にしたEWPSP運動の促進、6.IPN理事としての活動、の六つの目標を掲げます。先ず、活動の焦点、次に、趣意書、を順次明らかにします。

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I:活動の焦点

1.英文著執筆(5部作)

  1. God and Analogy: In Search of a New Possibility of Natural Theology (Ph.D.dissertation, Claremont Graduate University, 1981)(To be revised for publication)
    Preface; Part One: Analogia Entis; Part Two: Confessional Dialectics; Part Three: Toward a New Formation of Analogy; Conclusions: A Whiteheadian Perspective of Natural Theology: Its Method, Its Realms, and Its Vision
  2. Reflections on the Divine Reality “With Us”: Four Modes of Theological Thinking in Creative Synthesis(Almost Complete)
    Prologue; Part One: Christ As the Problem of Analogy: Pursued by the Method of Analogia Actionis; Part Two: Katsumi Takizawa’s Philosophy of God “With Us”: With the Idea of the Proto-factum Immanuel at Its Core; Part Three: Two Dialogical Fronts of Whitehead’s Philosophy: Karl Barth’s Analogical Theology and D. T. Suzuki’s Zen Thought; Part Four: Comparative Philosophy of Religion: Within the Purview of Thomist Categories of Analogy; Epilogue
  3. Buddhist-Christian Apologetics: Let God Be Proved True Globally Through Dialogue with Buddhism (Almost Complete)
    Introduction: Buddhist-Christian Apologetics in Seven Stages; Part One: Situation?Vindicating the Hidden Presence of God in the Human Predicament; Part Two: Message?Toward a Buddhist-Christian Theology of Loyalty; Part Three: Salvation?The Wider and Richer Dynamics of Justification; Part Four: Pedagogy?The Way in Which We Acknowledge the Ways Anew; Appendix: The Assemblage of My Poem
  4. Anselm’s Argument and Buddhist Wisdom (Almost Complete)
    Prologue: Studying Anselm’s Argument Anew in Dialogue with Buddhist Wisdom: With the Idea of a Buddhist-Christian Theology of Loyalty as Guide; Part One: The Forefront?Anselm’s Argument and Buddhist Wisdom; Part Two: The Background?The Idea of a Buddhist-Christian Theology of Loyalty: Accounting for the Meaning of Christian Theology in a Religiously Pluralistic Age; Epilogue
  5. God and Emptiness in Dialogue: Process-Nishida Studies in Search of a Metaphysical Healing of Humanity (Almost Complete)
    Prologue: The Idea of a Buddhist-Christian Philosophy: By Means of Process-Nishida Studies; Part One: Time, Human Nature, and the Ultimates; Part Two: Toward a Mutual Transformation of Christian and Buddhist Philosophies; Part Three: God and Emptiness in Event Metaphysics; Epilogue: In Search of a Metaphysical Healing of Humanit

2.邦文著執筆(5部作)

  1. 9・11とプロセス神学:東西哲学の対話に向けて(脱稿、出版社で検討中)
    はしがき;第一部:9・11とアメリカ・キリスト教平和思想;第二部:東西哲学の対話とプロセス神学;エピローグ:滝沢哲学再発見――辱めの政治学から品格承認の政治学への端緒;巻末付論:イエスの宗教の秘密――柳沢桂子さんの宗教観に寄せて;あとがき
  2. 21世紀の新風を求めて:危機からの神学的省察(脱稿、推敲中)
    はしがき;プロローグ;第一部:21世紀の新風を求めて;第二部:実存の危機から福音へ――神学的省察I;第三部:文明の危機から対話へ――神学的省察II;第四部:地球時代の政治神学――神学的省察III;エピローグ;あとがき
  3. 受肉の神学:救済論と形成論(脱稿、推敲中)
    はしがき;第一篇:救済論;プロローグ:人はいかにしてすくわれるか;第一部:受肉の神学一試論――発見学、痛知学、絶叫学の提示;第二部:受肉の神学としての痛知学;第三部:受肉の神学としての祈祷論――バルト神学における祈祷理解;第二編:形成論;はじめに:新しいかたちこそ重要なのである;第一部:新しいかたちの探究――イエスの行動を焦点に;第二部:新しいかたちの原理論――「イエスとキリスト」論をめぐって;第三部:新しいかたちの展開論I――組織論的理性の神学;第四部:新しいかたちの展開論II――地球時代の政治神学;エピローグ:救済論と形成論の綜合
  4. 在家キリスト教のすすめ(脱稿、推敲中)
    上巻:開拓伝道のなかから;はしがき;プロローグ:信心決定の新時代におけるキリスト教のかたちに関する提言;第一部:開拓伝道としての在家キリスト教;第二部:在家キリスト教の神学;下巻:曙の翼をかりて;第三部:曙の翼をかりて;はじめに;付論:「在家キリスト教のすすめ」の論理――プロセス神学の視座からのまとめ;エピローグ:仏教的挑戦とキリスト教的弁証論――仏教的キリスト教としての在家キリスト教
  5. 「神と空」の哲学:形而上学的癒しの探求(執筆中)
    序文;第一部:アナロジーの方法と本来的実存:西田哲学との対話;第二部:「神と空」の哲学;第三部:エイブラハム・ヘッシェルの「人間を求める神」(God in Search of Man)について;エピローグ:第二次大戦時におけるヴィクター・フランクルのロゴセラピーと「9・11」以後の形而上学的癒し
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3.出版された著書の宣伝販売の促進

著作家として一番嬉しいのは、どのような賞でもなく、読者に買って読んでいただくことです。以下、著書を新しいものから順番に並べます。これらは、紀伊国屋、丸善、ジュンク堂、Amazon、Yahooなどでオンライン購入が可能です。

邦書:単著

  1. 対話論神学の地平―私の巡礼のなかから
    春風社2006/09出版 税込4,500円
  2. 地球時代の政治神学―滝沢国家学とハタミ「文明の対話」学の可能性
    創言社2003/04出版 税込2625円
  3. 地球時代の良寛
    考古堂書店2001/05出版 税込2100円
  4. ホワイトヘッドと西田哲学の〈あいだ〉:仏教的キリスト教哲学の構想
    法蔵館2001/03出版 税込3570円
  5. 生きる権利 死ぬ権利
    ジョン・B・カブ著・延原訳2000/01 税込2520円
  6. 至誠心の神学:東西融合文明論の試み
    行路社1997/04 税込2100円
  7. 地球時代のおとずれ:敬和学園大学のキリスト教主義とは何か2
    創言社1995/05 税込2345円
  8. 三分間のおとずれ:敬和学園大学のキリスト教主義とは何か
    創言社1994/01 税込2039円
  9. とりなしの祈り:物語形式のプロセス神学
    ジョン・B・カブ著・延原訳 ヨルダン社1990/09 税込1631円
  10. 無者のための福音:プロテスタント原理の再吟味を媒介に
    創言社1990/06 税込2243円
  11. 仏教的キリスト教の真理:信心決定の新時代に向けて
    行路社1987/10 税込3990円
  12. 対話を超えて:キリスト教と仏教の相互変革の展望
    ジョン・B・カブ著・延原訳 行路社1985/07 税込2520円
  13. プロセス神学の展望:概論的解説
    ジョン・B・カブ デーヴィド・R・グリフィン共著・延原訳 新教出版社1978/05 税込3262円
  14. 今こそ傷口をさらけ出して:金嬉老との往復書簡
    編著 教文館1971/09 税込714円

邦書:共著

  1. プロセス思想研究―ホワイトヘッド・プロセス思想の現代的課題
    遠藤弘編著:寄稿「ホワイトヘッドとアメリカ・プロセス神学:東洋的視点よりの批判的理解と提言」南窓社2000/05 税込7050円
  2. ホワイトヘッドと文明論
    プロセス研究シンポジウム編:寄稿「原理の現実への変換はいかにして可能か:アンセルムス、ナーガールジュナ、ホワイトヘッド」行路社、1995/11 税込1,545円
  3. 総説 現代神学
    熊沢義宣・野呂芳男共編:寄稿「諸宗教との対話」日本基督教団出版局1995/09 税込8155円
  4. 宗教多元主義の探究:ジョン・ヒック考
    間瀬啓允・稲垣久和共編:寄稿「在家キリスト教提唱」大明堂1995/03 税込3150円
  5. 西田哲学:没後五十年記念論文集
    上田閑照編:寄稿「純粋経験/自覚より神の場所論的証明へ」創文社1994/06 税込6825円

英文著:共著

  1. : Der Dialog zwischen Naturwissenschaft und Religion ueber Schoepfung und Natur angesichts der Fragen von Kausalitaet und Determination
    Sybille Fritsch-Opperman (Hrsg.): Contribution: “God and Emptiness: Cause, Reasons, and the World’s Abyss [Forms of Panentheism in Religion and Nature],” Evangelische Akademie Loccum, 2001
  2. Mitten im Tod: vom Leben umfangen: Gedenkschrift fuer Werner Kohler
    Jochanan Hesse (Hrsg): Contribution: “Katsumi Takizawa’s Approach toward a World Theology: A Critical Exposition from a Process Perspective,” Peter Lang Frankfurt, 1988
  3. Dharma and Gospel: Two Ways of Seeing
    Ed. G. W. Houston: Contribution: “A Christian Interpretation of the Four Noble Truths,” Delhi, India: Sri Satguru Publ., 1984

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4. 必要に応じての海外国内における講義講演などの
   学術教育活動の実施

  幸い、2008年3月末をもって、1991年(平成3年)の開学以来、17年間にわたって、哲学・神学の教授とチャプレン(宗教部長)の兼務を果たした敬和学園大学からはめでたく引退となりますので、主宰としては、「出向」から「本務」に戻ります。まだ少し先の事でありますが、ここにEWPSPとしては「新方針」を確認し、今後10年にわたる企画を述べておきたく存じます。

  思えば、17年間、新発田の田舎に来ましたのに、兼務は、こまねずみのような多忙を強いましたので、フル・プロフェッサーとしての三つの講義(哲学、比較宗教思想、現代哲学)と三つのゼミ、及び夜間授業(組織神学)という風に大体前後期とも7コマの授業と、チャペルも宗教センターも未だないキリスト教主義大学でのチャプレン活動――2003年よりのチャペル・アッセンブリ・アワー(CAH)の単位化により、学生達の熱意を喚起し、大盛況であるのは、誠に悦ばしい限りである。協力者諸氏に感謝無限――とにより、この17年間分刻みで生きて参りました。田舎での分刻みの生活は、予想していませんでしたが、十分満喫いたしました。兼務のいずれも嫌いではありませんでしたので。新設キリスト教主義大学の滑り出しにもう十分にご奉仕いたしましたので、この辺で無事解放。リタイアメントとは恩寵なり。誠に欣快至極。これからは天与の本務に専心打込みます。時と場合に応じての応援は拒みませんが。

以下、今後の方針の弁:

  1. これからは、先に叙述した英文邦文を併せて10部にわたるライフワークの著述の完成、出版のため、先ずは沈潜。
  2. 折を見て、必要に応じて、プロセス−西田学を中心にして海外国内を問わず自由な講義講演活動を展開する所存であります。古巣のクレアモント、ルーヴァンほか、これからは世界講義講演漫遊の旅のとき。
  3. 学会活動は、今までより、大切にできるのではないか、と期待しております。ことにアメリカ宗教学会など、かつて座長を務めた手前(1985―1991)、毎年秋の年次総会に顔を見せるべきでありましたが、大学の入試のため、ここ十年ほどそれも叶わなかったことは無念でありましたが、これも無事解禁。嬉しい限りであります。これは、クレアモントにおけるプロセス研究センターへの協力、IPN理事としての活動、日本ホワイトヘッド・プロセス学会関係の活動、ISREV(国際セミナー宗教教育と価値)関係の活動、西田哲学会、東西宗教交流学会、Buddhist―Christian Studies、滝沢克己協会、IPO (International Philosophy Olympiad)、などとの関係に就いても同様であります。
  4. いずれにせよ、EWPSPの主宰としては、海外国内の諸機関と必要な約定を結んで、講義講演活動を展開する所存であります。
  5. EWPSPの新方針は、HP公開(日英)いたします。
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5.プロセス−西田研究を中心にしたEWPSP運動の推進

  1. 先ずは、来年度の西田哲学会(於独協大学、2007年7月21日−22日)でシンポジウム「西田における哲学と宗教」の発題講師の一人に指名されましたことを幸いに、この夏ザルツブルクと日本ホワイトヘッド・プロセス学会(於天理大学、11月11日−12日)で発表した論文「アンセルムスにおける理性と直観」が好評でしたので、これを活かして西田と繋げたいな、と思っております。
  2. 邦語著作Dの『神と空の哲学:形而上学的癒しの探求』は、興に乗れば、正月休みのたのしみであります。一気に爆発的に書いてしまいたいです。本当の「一気に爆発的に」は、正式リタイアメントまでしばしお預けでしょうが。
  3. 長期的には、AARセミナーのまとめの英文著:Experience and Language in Whitehead and Nishidaに力を注ぎたいです。
  4. 短期的には、拙著の内、邦書@『対話論神学の地平』とC『ホワイトヘッドと西田哲学の<あいだ>』の宣伝と販売に精を出します。いずれもAmazonで上位になり、よく売れていますので、さらに出版者を著者としても後押しいたします。この二著に限って、直接コンタクトの方には、著者八掛けで限定販売いたします。お申し付け下さい。
  5. 英文著の内、Buddhist―Christian Apologeticsは、最後の章:“Buddhist―Christian Pedagogy”(今度の紀要に掲載)が出ましたら、一気に完成。出版社との折衝に移ります。07年初めの仕事となりましょう。
  6. そしてAnselm’s Argument and Buddhist Wisdomは、著者として一番好きな主題。欧州での出版が最適かも。
  7. Reflections on the Divine Reality “With Us”: Four Modes of Theological Thinking in Creative Synthesisは、主題から言って、米国での出版が最適。
  8. 『9・11とプロセス神学:東西哲学の対話に向けて』は出版社で検討中。170頁くらいのコンパクトな書物になることでしょう。大いに売れて欲しいです。そこに描かれているのは、ブッシュ政権批判を経由したブッシュ以後の世界。それを見なければ、世界(ことに日本)のキリスト教は、dirty imageで、助からないでしょう。
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6.IPN理事としての活動

  1. これは、毎月のオンライン理事会(チャット)に忠実に参加することです。
  2. IPN Logoの完成に寄与できたことは、06年の成果の一つであります。因みに、それの解説:“The IPN Logo and IPN: A Zen Buddhist Interpretation”も委員長Herman Greeneに求められて書きました。只今、プロセス研究センタ−では、ニューズレタ−の次号に掲載準備中の由。
  3. 今では、IPNもそうですが、世界の重要な学術的企画と会議大会は、皆インターネットを媒体として進められていますので、地球上のどこにいようと、貢献は等距離で可能です。このことは、私は、2002年の第十回国際哲学オリンピアード(東京)を国連大学で開催した際、会長としてつぶさに経験いたしました。会場の交渉、整備、宿舎の交渉、プログラムの設定、オンライン掲示、講師の依頼、招待、世界16ヶ国の代表(高校生と引率教官)の招待、連絡、――それらこれらを皆、私のPCでやり遂げることができました。恐るべきインターネット時代であります。
  4. ですから、私は「大学の生き残り」などという閑人のたわごとを信じません。大学が実体(substance)として生き残るなど、実体論哲学の最悪のものであります。我々ホワイトヘディアンのprocess-relational way of thinking(プロセス−関係的思惟方法)によるならば、大学は、すべからく、Inter-Universityの一環、一員と自覚すべきでありましょう。より重要なのは、大学ではなく、地球大に拡大した広大な「知的社会空間」であるInter-Universityなのであります。このことを知らぬ人だけが、大学を特定イデオロギー(それが、今度の教育基本法改定に反対であれ、賛成であれ)によって縛り上げようとするのです。不可能な企てと申せましょう。そうした姑息な実体論教育哲学とは、付き合いたくありません。いずれ、自然淘汰されて行くことでしょう。
  5. どのような実体論哲学も、一度「全体は全体ではない」(上田閑照)という真実に触れれば、潰えます。誰かが「これが全体だ。私の見解がそれを掌握している」と言ったとします。そのとき、すでにもうある時間が経過していますので、その間、様々な個物の発生、活動があります。これを「イデオロギー的全体」は包むことができないのです。
  6. EWPSPは、関係論思考で生きてゆく学術の一単位であります。一施設からの引退は、逆に見れば、広大なInter-Universityの中で自由に爆発的に活動する端緒となりましょう。こまねずみは卒業します。IPN活動全開です。Toward a Global Service!
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結語:

  最後に、これだけは忘れずに書いておきたいと思います。IPN運動の中でEWPSPの果たす貢献の内最大のものは、思うに、東西の「至誠心」(Loyalty)の哲学を対話論的に明らかにする点にあります。実体論哲学は、どのようなものも、自我中心的です。デカルトが、「実体とは、存在するために自己以外の何物も必要としないあるものである」と言った時から、そうです。これが、大学生き残り作戦の隠れた精神でしょう。

  西田幾多郎は、これに反して、述べました:「純なる場所的自己限定として、一毫の私なき所、私はこれを誠と考える。而して至誠は大悲大慈に基礎附けられていなければならない」(上田閑照編『自覚について 他四篇:西田幾多郎哲学論集V』岩波文庫、1989年、377頁)。これは、大学教育論から言えば、大学は広大な社会的空間であるInter-Universityの「純なる場所的自己限定」として、寸毫の私なき所であるべきです。EWPSPはここを狙います。Inter-Universityに資するために、至誠に努めたく存じます。

  なぜそのように努めるのかと言えば、ホワイトヘッドが次の一句で言ったように、我々は、滅びる時に永遠であるからです:”…what we are is of infinite importance, because as we perish we are immortal” (Essays in Science and Philosophy, Philosophical Library, 1947, p. 117).ホワイトヘッドのこの一句は、イエスの精神を表しているでしょう:「自分の命を救おうと思うものはそれを失い、わたしのため、また福音のために、自分の命を失うものは、それを救うであろう」(マルコ福音書8章35節)。私はこの道理を簡潔に「無私即救済」と呼びたいと思います。この道理の修道が真の学問であります。

(文責:延原時行)
2006年12月17日

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II:東西プロセス研究プロジェクト:趣意書(1985年)

  プロセス研究運動のような哲学的運動に関わっている者たちにとって、1980年代の後半に最も重要な任務の一つは、核至上主義やGNP至上主義によって典型的に象徴されているところの権力を超脱することの出来る方途を見出し、闡明することである。

  西洋において自然法の理念が漸次廃れて来るとともに、我々の世界を決定的に支配しているのは権力の地位に就いている人々の意思であって、彼らへの法的な制約ではない、ということが明らかになって来た。1945年におけるヒットラーのナチズムと日本軍主義の連合軍による敗北(日本の場合には、究極兵器原爆の投下による)は、ドイツ人・日本人自身を含む世界中の多くの人々によって一応、是認されたのであるが、これは彼らがこの誤認されたポジティヴィズム(実証主義、実定法主義)の危険に気付くようになったからである。しかも、人類は、過去四十年にわたって、誤認されたポジティヴィズムよりも高尚にして強力な人道的な諸ルールに基づくグローバル・シヴィリゼーションを創生することにまだ成功していないのである。

  私は何も、国家のようなポジティヴな権力がそのものとして悪だとか、不必要だとか、言っているのではない。むしろ私は、今では全地球規模で拡がっているポジティヴな諸権力が、力強いグローバル・シヴィリゼーションの出現によってバランスをはかられる必要がある、ということを言っているのである。東西プロセス研究プロジェクトの創設が重要な意義を担うのは、正にこのコンテクストにおいてなのである。この『プロジェクト』の目標と機能に関する私のアイディアを以下、少しく描出することをお許しいただきたい。

  目的――プロセス研究センターの特設プロジェクトとして、『東西プロジェクト』は、プロセス思想を通じて東西両洋の人々のあいだの対話論的出会いを促進し、地球規模での正義、平和、福祉に向けての東西協力関係のための哲学的、神学的、科学的、道徳的諸根拠を模索することを、企図する。

  方途――『東西プロジェクト』は、これらの目的を、北米にすでに多年のあいだ存続し、近年ヨーロッパとアジア(ことに日本)で澎湃として興って来たプロセス研究運動を通じて実現、達成する所存である。

  三つの主要な活動形態――(1)北米と欧州におけるプロセス神学/哲学と日本における西田学派仏教哲学及びアジアの他の学派との比較研究。我々は国際会議、講演、交換プログラム、及び関係諸学派の思想によって、また彼らに関して書かれた述作の翻訳と出版を促進する所存である。(2)北米、ヨーロッパ、及びアジアにおけるプロセス思想家たち相互間の三叉路コミュニケーションをはかること。我々は国際会議、講演、交換プログラム、及び三地域のプロセス思想家たちによって、また彼らに関して書かれた述作の翻訳と出版を促進する所存である。(3)一般非専門家のためのプロセス研究を通じての東西交流。我々は既述の三地域における「プロセス思想とグローバルな問題意識」に関する講演、エクステンション授業、仏教とキリスト教の瞑想ツア−、三地域における社会正義と平和や「プロセスと信仰」に関する国際会議、及び一般非専門家にも近づくことの出来る著書の翻訳・出版を促進する所存である。

  私の確信はこうである――経済的、政治的、軍事的諸権力は、何らかのヨリ高尚な文化的大義に至誠を全うするのでなければ、人生の諸価値を豊潤化することが出来ない、という意味で、無力なのである。プロセス思想は、人が人生の諸価値を意味のある方法で尊ぶことの出来る視座を開拓して来た。ならば、どうしてその同じ視座を、今度は、文化間の対話、大陸間の対話を通じてさらに展開しないという手があろうか。(Newsletter of the Center for Process Studies, vol. 9/no. 2, Spring 1985, p. 5;拙著『無者のための福音:プロテスタント原理の再吟味を媒介に』58―60頁、参照。)

備考:2006年12月18日の時点での省察

  この趣意書は、1985年Center for Process Studiesのなかに設置したEWPSPの初心を示すものとして、同年アメリカ宗教学会(AAR)内に設置した共同研究部会:Seminar on Process Thought, the Nishida School of Buddhist Philosophy in Comparative Perspective(プロセス思想と西田学派仏教哲学―比較的視座から)に具現されるに至る。共同研究実施期間:1985−1991。

  このように、あるプロジェクトの趣意書の発意と国際的学会活動の活性化とは切り離せないのである。両者の連携に関するこの事情は、現在も変わらない。少なくとも欧米の学術教育界においては、これは標準的智慧である。この智慧を欠いては、学術教育界全体もその部分的活動体としての個々の大学も成り立たない。正直言って、これを欠くならば、大学は、個別的スキルの習得に全神経を集中する専門学校ないし各種学校に無限に接近する。そして補助学(例えば、語学や介護技術)を包摂し方向付ける全体学(哲学ないし形而上学)に至らぬまま、自己喪失する。つまり、実質的には、大学ではないのである。

  大学の理念は、趣意書を不可欠的に要求するのである。21世紀はじめの現在、趣意書はグローバルな射程を持つものでなくてはならない。

  この意味で、EWPSPは、その趣意書により、学術教育の全体構想を示しながら、大学運動の酵素であることを企図するわけである。ここで「大学運動」と言うのは、個々の大学にとどまらない、グローバルな規模での全体的運動を指すものであって、IPNはその一つの優れた事例である。EWPSPは、世界的なIPN運動の一機関である。

(文責:延原時行)

 
     

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