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PDE Inter-Universityニューズレター:第二十一号
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PDE Inter-Universityニューズレター第21号:


平成20年度「学びんピック」(文部科学省)認定
全国高校哲学エッセイコンクール(2008) のお知らせ


 「哲学」というと、何か難しい、縁遠いものだと思いませんか? けれども実は、

「人間とは何か?」
「世界とは何か?」
「歴史とは何か?」
「本当に確かなものはどこにあるのか?」

といった、素朴だけれども根本的な問いを、どこまでも考えぬこう、というのが、哲学するということなのです。みなさんも一度は、こういった疑問について考えてみたことはあるでしょう。そう、哲学するということは、人間誰にも関わりのあることなのです。

 若いみなさんがこうした根本的な問題について考えた成果を、ひとつのコンクールのなかで試してみよう――そう思った方は、全国高校哲学エッセイコンクールにぜひとも応募してみてください。

 今年も「全国高校哲学エッセイコンクール(2008)」 を開催しますので、全国の高校生のみなさん、ふるってご応募ください。参加資格は、来年5月時点で高校生であることです。つまり現在高校1, 2年生の方、そして来年4月に高校に進学予定の中学3年生の方が対象となります。応募作品を審査した結果、金賞2人、銀賞2人、銅賞3人を表彰し、最優秀の2人はフィンランドのヘルシンキで開かれる国際大会(2009年5月)に出場していただきます。

 このコンクールは2009年5月の第17回国際哲学オリンピック (XVII International Philosophy Olympiad、略称 IPO) の予選を兼ねています。IPOは日本を含む世界二十数カ国の高校生が、思索力や論理的議論の力を、外国語による表現を通して競う哲学エッセイのコンテストです。来年のIPO大会の概要は www.philosopiad.org に掲載される予定です。従来のIPO大会の概要もこのサイトで見ることができます。なお第10回東京大会から第16回ルーマニア大会までのもようは、敬和学園大学のHP (www.keiwa-c.ac.jp/ipo/index.html) をご覧ください。

IPO日本組織委員会
北垣宗治(委員長、敬和学園大学前学長、同志社大学名誉教授)
延原時行(事務局長、敬和学園大学名誉教授)
矢嶋直規(敬和学園大学教授)
林 貴啓(立命館大学講師)

 

応募のしかた

 次に挙げる①~④の命題のうち一つをとりあげ、それについてあなたの考え方を論理的に展開するエッセイを日本語ないし英語で書いてください。A4用紙で3~5枚程度の長さとします(ワープロ使用を推奨します)。日本語の場合、4000字~5000字でまとめてください。

 国際大会本選ではすべて英語で書くことになります。特に本選出場を目指す人は、エッセイ本文を日本語で書く場合、その内容を100語程度の英文で要約したものを添付するか、この予選でも英語で書いてみることをおすすめします。

 

IPO予選 課題

① A sense of responsibility for the continuance of a social system is basic to any morality.  (Whitehead)

社会秩序の存続に対する責任感は、あらゆる道徳の基礎である。(ホワイトヘッド)

「モラル崩壊」といわれるこの時代、あらためて「道徳」というものの意味が問い直されているといえます。そもそも社会が成り立ってゆくためには何が求められるのか。道徳というものの持つ意味は何か。それを考えさせる一節です。

 A. N. ホワイトヘッド(1861-1947)は英国生まれ、後にアメリカに渡って活躍した哲学者。数理論理学者として活躍した後、渡米後は哲学者として、近代科学の機械論的な世界観を乗り越え、この宇宙を創造性に満ちたプロセスとして理解する「有機体の哲学」を提唱しました。上の一節を含む著書『ホワイトヘッドの対話:1934-1947』ialogues of Alfred North Whiteheadは、弟子のジャーナリスト、ルシアン・プライスがハーバード大学引退後のホワイトヘッドの自宅で開催された談話集会での恩師の肉声を記録したもので、1947年12月30日の永眠の直前(11月11日)の談話まで収めます。形而上学的文明論として出色の記録で、英国人としての米国観察、20世紀論も読ませます。プラトンの対話編が20世紀に躍りこんだような生きた哲学書といえましょう。最後の文章「宇宙における(神との)共同創造者としての人間の真の運命こそ、人間の尊厳であり、崇高さなのです。」はホワイトヘッドの形見の一句(memento)です。

② Why is there something, rather than nothing?  (Leibnitz)

 なぜ何かが存在するのであって、何も無いのではないのか。(ライプニッツ)

 哲学の根本問題ともいうべき、「存在」への驚きを何よりもはっきりと表した一節です。そもそもこの世界が存在すること自体が不可思議きわまりないこと。それに気づくところから哲学的な問いも始まる、というのです。それはまた、こうした問いを発している自分が存在することに対する不思議にもつながってくるでしょう。

  ライプニッツ(1646-1716)はドイツの哲学者。微積分学を形成するなど、数学者としても有名ですが、ものごとが生じるには必ずそれ相応の理由がなければならない、という「充足理由律」を原理とし、世界の根本を生きた個体である「単子(モナド)」として考える哲学を提唱しています。

③ If I had to choose between betraying my country and betraying my friend, I hope I should have the guts to betray my country.  (Forster)

 もし祖国と友、どちらを裏切るかを選ばなければならないとしたら、私は祖国を裏切る勇気を持ちたいものだ。(フォースター)

 究極の選択ともいうべき、道徳的ディレンマについて問いを投げかけています。私たちがどれほど国というものに支えられて生きているかは、普段では気づかないほどになっています。その一方で何より大切にしたい友、友情というものがある。どちらを選ぶのか、みなさんの立場からも問いぬいてもらいたいところです。

  E. M. フォースター (1879-1970) は英国の小説家で、『インドへの道』が代表作。ヨーロッパがナチスの脅威に怯えた時代に自由人として発言し続け、異文化同士の出会いとその困難さに対して独特の洞察力を示す作品を発表しました。

④ Does science need philosophy?  (Korean IPO Committee, 2004)

 科学は哲学を必要とするか。(2004年IPO韓国大会の課題)

 今はまさに科学時代。科学は宇宙のはじまりから生命の神秘に至るまで世界のあらゆる物事を解き明かそうとしており、また科学の成果をもとにしたさまざまな技術は、私たちの生活をますます便利に、豊かにしています。そんななかで哲学は必要とされるのか。そもそも「科学」、「哲学」とはどういうものなのか。ここでみなさん自身が考えてみたらどうでしょうか。


 予選では課題文の日本語訳と解説をつけましたが、国際大会本選では単に英文で課題文のみが与えられる形式になります。

添付資料: 応募志願書(あなたの意気込みを日本語で書いてください)、氏名、住所、電話番号、E-mail address、学校名と学年、学校のアドレスと電話番号、をエッセイに添付してください。
エッセイの送り先: 957-8585 新潟県新発田市富塚 1270 敬和学園大学 IPO事務局
締切: 2009年1月31日
選考結果:

敬和学園大学のHPに発表します。金賞2人と銀賞2人の4人を予選通過者とし、当委員会から直接連絡します。

問い合わせ先: E-mail で jitsuzon@mbox.kyoto-inet.or.jp
付録: 哲学エッセイで使えると便利な用語集 対訳版

 哲学の用語というと難しそうに思えるかもしれません。けれどもこうした用語を知ることで、その言葉がなければ思いもよらないような発想や、その言葉があるからこそ開けるような視点を持つことができるようになります。
「実存」という言葉があるからこそ、「今ここに現に生きている、宇宙に一人きりの自分」の姿を、ますます突き詰めて考えていくことができます。「物事のほんとうの姿とは何か」を考えるとき、「イデア」という言葉はひとつの意義深い視点を提供してくれます。

つまり、新しく「言葉」を得るというのは、物の見方を、いってみれば「世界」を広げるという経験なのです。「私の言語の限界は、私の世界の限界である」(ウィトゲンシュタイン)ともいいます。一見難しそうな哲学の言葉も、このように見直してみたとき、新しい意味合いを帯びてきます。

そんなわけで、こうした「言葉」のいくつかを和英対訳で紹介しておきます。みなさんが自分の考えを導くうえでも、エッセイに書き表す上でも役立ててみてください。


agnosticism: 不可知論
 世界の究極の姿や神・超越者の存在について、人間には知りえないとする考え方。「無神論 atheism」とは違って、神の存在を積極的に否定するものではありません。

contingent/ necessary: 偶然的/必然的
「偶然」とは、そうであるかもしれないが、そうでないかもしれないこと。「必然」はその反対で、そうでしかありえないことです。

cosmology:  宇宙論
宇宙の生成、発展、消滅や、それを成り立たせる根本原理についての研究。ビッグバンや銀河系の生成などの出来事について経験的に探る場合は自然科学の立場となりますが、この宇宙をそもそも成り立たせる根本原理を探る、となるとホワイトヘッドの立場に代表されるように、哲学的な探究になります。

dialectic: 弁証法
もともとは問答・議論の方法の意。あらゆる事物は対立するものを生み出し、次にその対立する両者はどちらの要素も含むものへと統合されていく、とする考え方をもさし、ヘーゲルやマルクスの哲学の基本的な立場です。一般に物事を二つの対立原理が相互作用しあって成り立つものとして理解する考え方をもいいます。

dualism/ monism: 二元論/一元論
存在するものは二種類の要素から成り立っている、とする立場を二元論、一種類の要素だけで成り立っている、とする立場を一元論といいます。人間について、精神と身体をまったく別の二種類のものとする心身二元論と、基本的に同じものとする一元論があります。

epistemology: 認識論
人が物事をどのようにして知ることができるか、正しいといえる知識の条件とは何かを探る哲学の領域。

essence: 本質
物事をそのものとして成り立たせている固有な特徴。

ethics: 倫理(学)
人はいかに生きるべきか、正義や善悪、義務について問う哲学の領域。

existence: 実存
今ここに生きる、宇宙にひとりきりの現実の自分の存在。この「実存」を出発点として考える哲学の立場を実存主義といいます。

idealism/ materialism: 観念論/唯物論
世界は究極的に非物質的・精神的なものから成り立っている、とする説を観念論、物質を世界の根本実在とみなす説を唯物論といいます。世界は精神と物質の両方からなっている、とする考え方は二元論になります。

intuition: 直観
ものごとの知識を推論によらず、直接的に洞察すること。この意味では日本語では「直感」ではなく「直観」と書きます。

metaphysics: 形而上学
存在するものの究極の本質を研究する哲学の一部門。しばしば目に見えて経験される世界を超えたものにまで探究を及ぼします。

naturalism: 自然主義
現実世界は、超自然的なものを抜きにして理解できる、とする哲学的な世界観。

ontology: 存在論
本当の存在とは何か、その存在の根拠とは何かを考察する哲学の領域で、認識論と並んで哲学の特に重要な部門となっています。

rationalism: 合理主義
一般には権威や神秘的なものを退け、理性的・論理的な根拠に基づいたもののみを正しいものとして受け入れる考え方を指します。ただ哲学史のなかでは、現実世界の知識は人間の感覚に頼るよりも、理性的な思考を通して得られるもの、とする立場も指します。

relativism
絶対的に正しいものの存在を認めず、正しさは時代や文化などによって変わる、とする考え方です。対義語は絶対主義 absolutism, あるいは普遍主義 universalism です。

skepticism: 懐疑論
何事も確かなものはないとして、断定的な判断や確信を控える立場。

universal: 普遍的
時と場所、状況を問わず、どんな場合にもあてはまること。

world, worldview: 世界(観)
哲学では存在するものの全体。あるいは存在するものすべてを成り立たせている場。この意味での「世界」をどう考えるか、という見方が「世界観」です。

 
     

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