応募のしかた 次に挙げる①~④の命題のうち一つをとりあげ、それについてあなたの考え方を論理的に展開するエッセイを日本語ないし英語で書いてください。A4用紙で3~5枚程度の長さとします(ワープロ使用を推奨します)。日本語の場合、4000字~5000字でまとめてください。 国際大会本選ではすべて英語で書くことになります。特に本選出場を目指す人は、エッセイ本文を日本語で書く場合、その内容を100語程度の英文で要約したものを添付するか、この予選でも英語で書いてみることをおすすめします。
IPO予選 課題 ① A sense of responsibility for the continuance of a social system is basic to any morality. (Whitehead) 社会秩序の存続に対する責任感は、あらゆる道徳の基礎である。(ホワイトヘッド) 「モラル崩壊」といわれるこの時代、あらためて「道徳」というものの意味が問い直されているといえます。そもそも社会が成り立ってゆくためには何が求められるのか。道徳というものの持つ意味は何か。それを考えさせる一節です。 A. N. ホワイトヘッド(1861-1947)は英国生まれ、後にアメリカに渡って活躍した哲学者。数理論理学者として活躍した後、渡米後は哲学者として、近代科学の機械論的な世界観を乗り越え、この宇宙を創造性に満ちたプロセスとして理解する「有機体の哲学」を提唱しました。上の一節を含む著書『ホワイトヘッドの対話:1934-1947』Dialogues of Alfred North Whiteheadは、弟子のジャーナリスト、ルシアン・プライスがハーバード大学引退後のホワイトヘッドの自宅で開催された談話集会での恩師の肉声を記録したもので、1947年12月30日の永眠の直前(11月11日)の談話まで収めます。形而上学的文明論として出色の記録で、英国人としての米国観察、20世紀論も読ませます。プラトンの対話編が20世紀に躍りこんだような生きた哲学書といえましょう。最後の文章「宇宙における(神との)共同創造者としての人間の真の運命こそ、人間の尊厳であり、崇高さなのです。」はホワイトヘッドの形見の一句(memento)です。 ② Why is there something, rather than nothing? (Leibnitz) なぜ何かが存在するのであって、何も無いのではないのか。(ライプニッツ) 哲学の根本問題ともいうべき、「存在」への驚きを何よりもはっきりと表した一節です。そもそもこの世界が存在すること自体が不可思議きわまりないこと。それに気づくところから哲学的な問いも始まる、というのです。それはまた、こうした問いを発している自分が存在することに対する不思議にもつながってくるでしょう。 ライプニッツ(1646-1716)はドイツの哲学者。微積分学を形成するなど、数学者としても有名ですが、ものごとが生じるには必ずそれ相応の理由がなければならない、という「充足理由律」を原理とし、世界の根本を生きた個体である「単子(モナド)」として考える哲学を提唱しています。 ③ If I had to choose between betraying my country and betraying my friend, I hope I should have the guts to betray my country. (Forster) もし祖国と友、どちらを裏切るかを選ばなければならないとしたら、私は祖国を裏切る勇気を持ちたいものだ。(フォースター) 究極の選択ともいうべき、道徳的ディレンマについて問いを投げかけています。私たちがどれほど国というものに支えられて生きているかは、普段では気づかないほどになっています。その一方で何より大切にしたい友、友情というものがある。どちらを選ぶのか、みなさんの立場からも問いぬいてもらいたいところです。 E. M. フォースター (1879-1970) は英国の小説家で、『インドへの道』が代表作。ヨーロッパがナチスの脅威に怯えた時代に自由人として発言し続け、異文化同士の出会いとその困難さに対して独特の洞察力を示す作品を発表しました。 ④ Does science need philosophy? (Korean IPO Committee, 2004) 科学は哲学を必要とするか。(2004年IPO韓国大会の課題) 今はまさに科学時代。科学は宇宙のはじまりから生命の神秘に至るまで世界のあらゆる物事を解き明かそうとしており、また科学の成果をもとにしたさまざまな技術は、私たちの生活をますます便利に、豊かにしています。そんななかで哲学は必要とされるのか。そもそも「科学」、「哲学」とはどういうものなのか。ここでみなさん自身が考えてみたらどうでしょうか。 予選では課題文の日本語訳と解説をつけましたが、国際大会本選では単に英文で課題文のみが与えられる形式になります。
哲学の用語というと難しそうに思えるかもしれません。けれどもこうした用語を知ることで、その言葉がなければ思いもよらないような発想や、その言葉があるからこそ開けるような視点を持つことができるようになります。 つまり、新しく「言葉」を得るというのは、物の見方を、いってみれば「世界」を広げるという経験なのです。「私の言語の限界は、私の世界の限界である」(ウィトゲンシュタイン)ともいいます。一見難しそうな哲学の言葉も、このように見直してみたとき、新しい意味合いを帯びてきます。 そんなわけで、こうした「言葉」のいくつかを和英対訳で紹介しておきます。みなさんが自分の考えを導くうえでも、エッセイに書き表す上でも役立ててみてください。 agnosticism: 不可知論 contingent/ necessary: 偶然的/必然的 cosmology: 宇宙論 dialectic: 弁証法 dualism/ monism: 二元論/一元論 epistemology: 認識論 essence: 本質 ethics: 倫理(学) existence: 実存 idealism/ materialism: 観念論/唯物論 intuition: 直観 metaphysics: 形而上学 naturalism: 自然主義 ontology: 存在論 rationalism: 合理主義 relativism skepticism: 懐疑論 universal: 普遍的 world, worldview: 世界(観) |
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