IPOのトップページに戻る IPOとは? Photo Gallary お問合せ リンク集  
国際哲学オリンピアード 日本語:PDE Inter-University オンラインドキュメント
英語:PDE on-line philosophical archives library
  敬和学園大学公式ホームページへ
PDE Inter-Universityニューズレター:第29号
  目次
PDFファイル
[ 174 kb ]
原文通り印刷したい方はPDFファイルをお勧めします。PDFファイルを閲覧するためにはAcrobat Readerが必要になります。

get acrobat reader
http://www.adobe.com/jp/products/acrobat/readstep2.html
Acrobat Readerはアドビシステムズ社より、無償で配布されています。
 
 


PDE Inter-Universityニューズレター第29号:


全国高校哲学エッセイコンクール(2010)
のお知らせ

「人は何のために生きているのだろう?」

「自分が自分であるとはどういうことだろう?」

「人と人とが分かり合えるとはどういうことだろう?」

 こんな問いは、みなさんも一度や二度、考えたことがあるでしょう。すでに、自分なりの考えを持っている人もいるかもしれません。

 こういう、誰にも関わるような人生と世界の根本的な問題を、自分の頭で問い、徹底的に考え抜くのが、「哲学する」ということです。

 「哲学」と聞くと何だか難しく、縁遠いもののように思えるかもしれません。けれども、こんなふうに受け止めてみると、実は誰にとっても他人事ではないことがわかるでしょう。

 哲学というものの本体は、「問うこと」「問題意識」にあります。世に「哲学者」と言われる人たちは、こうした問題意識を人一倍問い詰め、独自の考えを築いていった人たちにほかなりません。

 そういう問題をみなさん一人ひとりが考えるということは、哲学者たちと同じ問題を問うということです。

 若いみなさんがこうした根本的な問題について考えた成果を、ひとつのコンクールのなかで試してみよう――そう思った方は、全国高校哲学エッセイコンクールにぜひとも応募してみてください。

 今年も「全国高校哲学エッセイコンクール(2010)」を開催しますので、全国の高校生のみなさん、ふるってご応募ください。参加資格は、来年5月時点で高校生であることです。つまり現在高校1, 2年生の方、そして来年4月に高校に進学予定の中学3年制の方が対象となります。応募作品を審査した結果、金賞2人、銀賞2人、銅賞3人を表彰し、最優秀の2人はオーストリアで開かれる国際大会(2011年5月)に出場することができます。

 このコンクールは2011年5月の第19回国際哲学オリンピック(International Philosophy Olympiad, 略称IPO)の予選を兼ねています。IPOは日本を含む世界二十数か国の高校生が、思索力や論理的議論の力を、外国語による表現をとおして競う哲学エッセイのコンテストです。来年のIPO大会の概要は www.philosopiad.org に掲載される予定です。従来のIPO大会の概要もこのサイトで見ることができます。なお第12回ソウル大会から第18回アテネ大会までのもようは、敬和学園大学のHPをご覧ください:www.keiwa-c.ac.jp/ipo/index.html

IPO日本組織委員会
北垣宗治(委員長、敬和学園大学元学長、同志社大学名誉教授)
延原時行(副委員長、敬和学園大学名誉教授)
林 貴啓(委員、立命館大学講師)

応募のしかた
  次に挙げる①~④の一節のうち一つを選び、それについてあなたの考え方を論理的に展開するエッセイを日本語(4000字~5000字程度)で書いてください。A4用紙で3~5枚程度の長さとします(原則としてワープロを使用してください。参加希望者でパソコンが使用できない環境にある場合、事前に委員会までお知らせください)。
  哲学者や思想に関する「知識」よりも、どこまで自分の頭で考え抜いたか、その思索の末にどのような考え方にたどり就いたのか、どのように自分の考えを根拠つけているか、といった点のほうが、「哲学すること」には大事です。評価も、そうした点を重視したいと思います。

 

IPO予選  課 題

人間は科学の洞察とテクノロジーの力によって巨視相の力となり、その水準は氷河作用や、過去の大絶滅を引き起こした力にも比肩します。けれども私たちは責任感や倫理的な判断力においては、微視相のものしかもっていないのです。私たちはまったく違った射程の責任感を発達させる必要があります。  (Thomas Berry, The Great Work

  トマス・ベリー(1914~2009)はアメリカの文化史家・環境思想家。人類文明の行方を宇宙と地球の進化の歴史の見地から展望し、これまで地球の生命圏に破壊的な影響を及ぼしてきた時代から、人と地球とが互いに高めあう新たな時代「エコ生代」に移行する必要を説いています。それがこの21世紀はじめに生きる私たちに課せられた偉業 Great Work だというのです。上の引用はその展望のなかの一節です。地球温暖化や生物多様性の喪失など、地球規模での環境破壊がさまざまな形で問題になる今、私たちの持つ「力」の大きさに見合うだけの倫理意識や責任感を求めています。

私は、私を閉じこめている宇宙の恐ろしい空間を見る。そして自分がこの広大な広がりのなかの一隅につながれているのを見るが、なぜほかのところでなく、このところに置かれているか、また私が生きるべく与えられたこのわずかな時が、なぜ私よりも前にあった永遠のすべてと私より後にくる永遠のすべてのなかのほかの点ではなく、この点に割り当てられたのであるかということを知らない。(パスカル『パンセ』より)

  真空の発見者にして「パスカルの原理」や気圧の単位「ヘクトパスカル」でもおなじみで、高校生のみなさんも数学者・物理学者としてのパスカルはご存じの方は多いでしょう。けれどもパスカルは「人間は考える葦である」という名高い言葉も残した優れた思想家であり、『パンセ』では巧みな人間観察から知性のはたらき、人間の真実、そして生と死の根本問題まで、多面にわたる鋭い哲学的洞察を見せています。上の引用は、「自分の存在」の不思議について触れた一節です。あるいはみなさんでも、このような問いに直面したことがあるかもしれません。このパスカルの一節に触れて、改めてその不思議について考えてみるのもどうでしょう。


両親は我が子をほしいと思って、子をもつに至ることはよくある。しかしどのような子をもつかは両親の意のままにはならない[子は親を選べないが、親も子を選べない]。このことは人間社会への「新しい加入者」(新生児)の「自由」の基盤であるだけではなく、その新参者を受け入れる社会にとっても新しい始まりである。人間の自由と人間社会の新しい可能性は、じつは思い通りにならない出生の自然性によって支えられている。(Habermasをもとに)

 ユルゲン・ハーバーマス(1925~)はドイツの哲学者。強制力によらず、対話と合意によって自由で人間らしい社会をつくっていくための条件を探りました。自然や他者を技術的にコントロールしようとする「道具的理性」に対して、対話によって共通理解を得ていく「対話的理性」の意義を強調しています。上の一節は、ハーバーマスの議論を受けた松田純「エンハンスメントと〈人間の弱さ〉の価値」(島薗進・永見勇編『スピリチュアリティといのちの未来』人文書院)をもとにしており、最新の遺伝子改造技術によって、子どもに知能や運動能力、容姿などに「優秀な」性質を持たせようとする「エンハンスメント」という方法が近い将来実用化されるかもしれない状況に触れて、その技術がおびやかすものは何か、を考察するなかで参照されたハーバーマスの考え方です。それは、人間社会を支える、根本的な意味での「人間の自由」だといいます。これに触れて、「自由」というものを深く考える機会としてみてください。


ローヤルティ(loyalty)は、能(あた)うかぎり、個己のなす諸行為のかたちにおいて永遠者を、すなわち、意識的かつ超個人的な生の統一を顕わそうとする意思である。
(ジョサイア・ロイス『ローヤルティの哲学』)

ジョサイア・ロイス(Josiah Royce)は、ハーバード大学哲学部の黄金時代を、築いた一人として知られています。のちにウイリアム・ジェームスやアルフレッド・ノース・ホワイトヘッドが続きます。彼の主著は『ローヤルティの哲学』です。人間の実際的な決断の中で、永遠者(神)との関係を生きる、という主旨の彼の哲学は、非常にアメリカ的な倫理的関心に貫かれた宗教性を示すものです。ローヤルティへのローヤルティは、誰の信条であってもその追求を許す気構えとして、米国的民主魂の代表であるとみなされています。清教徒革命の哲学的反省から生まれたなまなましい歴史的背景を持っています。延原時行著『至誠心の神学』(京都・行路社、1997年)は、日本に数少ないロイス哲学の研究書です。

 この予選では課題文を日本語で出題し、解説を付記しています。予選を通過した約10人の方に、予選二次として英語で課題を課し、英語でエッセイを書いていただき、その審査に基づいて国内予選の結果を出すことになります(国際大会本選では英語により課題文のみが与えられます。)

 

提出資料: エッセイには必ず、①選んだ課題の番号 ②氏名 ③住所と電話番号 ④E-mail address ⑤学校名と学年 ⑥学校のアドレスと電話番号、を添付してください。また、よろしければ哲学に興味を持ったきっかけや今の関心、IPOをどのようにして知ったか、この予選にあたっての意気込み、なども書き添えてください。

エッセイはペーパーを 「〒957-8585 新潟県新発田市富塚 敬和学園大学 IPO事務局」宛2011年1月31日までに郵送する(31日の消印があれば有効)とともに、電子データによる同一のエッセイを ktgk@hb.tp1.jp; ayashi@za2.so-net.ne.jp の二つのアドレスに、e-mail の添付してお送りください。電子データの締切は2月4日とします。
  電子データのファイル名には、出場者のお名前を入れてくださるようお願いします(例:「哲学太郎 IPO予選課題」)。

選考結果: 敬和学園大学のHP に発表します。金賞(オーストリアでの第19回国際大会への参加資格)2人、銀賞(1万円図書カード)2人、銅賞(5千円図書カード)3人を入賞者とし、当委員会から直接連絡します。

問合せ先:  E-mail で ktgk@hb.tp1.jp または ayashi@za2.so-net.ne.jp まで。哲学的内容についての質問は後者のアドレスでお受けしています。

 


前のページに戻る
このページの先頭へ


2003 国際哲学オリンピアード-第十回大会事務局 敬和学園大学-. All rights reserved.