情報メディア研究所

閉店する新発田大連軒を取材した学生映像作品を公開

2019年9月15日、新発田の老舗食堂「大連軒」が閉店します。閉店が発表されてから、連日多くの人々がお店を訪れています。

大連軒閉店のお知らせ

大連軒のラーメン

大連軒のラーメン

大連軒については、2017年2月、集中講義「現代メディア論」で、学生チームが取材しています。大連軒62年の歴史を垣間見た作品を、あらためて大学のYouTubeアカウントで公開しました。

新発田 大連軒〜ある老舗食堂の歩み(「現代メディア論」2016年度後期制作作品) – YouTube
制作:佐久間瑞希、山川沙羅、亀山咲、柿田雄大
監修:妹尾克利、一戸信哉、市川雄治(TA)
協力:大連軒、敬和学園大学

現代メディア論は4日間の集中講義で、学生チームが、普段あまり接することのない新発田のさまざまな事象を撮影・編集し、映像作品にしています。このチームは「おいしいもの」を探すうちに大連軒にたどりつくのですが、お店のルーツや現状を知り、それらのレポートをメインとする作品を作ることになりました。

大連軒は、中国遼寧省大連市がルーツ。日本占領時代の大連で、「満鉄」につとめていた人が、戦後水原(現阿賀野市)で大連軒を経営、ご主人田辺信夫さんはこの店で修行し、新発田で「のれん分け」で開店したといいます(すでに水原店は閉店)。田辺さんの師匠がつとめていた「満鉄」というのが、満鉄直営のヤマトホテルのレストランなのか、それとも社員食堂なのか、詳しくはわかりません(田辺さんは「社員食堂」ではないかとおっしゃっています)。

ラーメン、餃子、カレーライスなど、オーソドックスな中華食堂の味が、新発田の人々に愛されてきました。戦後、新発田・水原に根付いた「大陸」の味を伝える店が、残念ながら姿を消すことになります。おいしいものを探した学生たちの作品が、貴重な新発田のアーカイブになりそうです。

この作品を生んだ集中講義「現代メディア論」は、2019年度から情報メディアコースの科目「映像制作」となり、さらに地域映像を制作する授業として展開していきます。

以下は、制作に関わった当時の学生と、指導した教員からのメッセージです。

亀山咲さん(2019年3月卒業)
「この授業は、2年生の時に参加した授業でした。わたしのグループは、「大連軒」を取材し、10分ほどの映像を作成しました。グループのリーダーが、『当たり障りないけど、新発田の美味しいお店に行って食レポしよう。』と提案し、この企画に決まりました。

『珍しくて今までにない映像を撮りたい!』と思っていたのですが、実際にお店に行って見ると、わたしが期待していたのとは逆の良さがありました。古き良き個人店の魅力がつまったラーメン屋でした。ラーメンを食べたときは、とにかく心と体があったかくなりました。

『大連軒』が閉店すると、わたしが作成した映像は、当初のわたしの期待どおりの『珍しくて今までにない』映像になっていくかもしれませんが、あの『ほっ』とする店が無くなると思うと寂しい気持ちがします。」

山川沙羅さん(2019年3月卒業)
「二年生の冬、映像制作の授業でおじゃましました。突然取材させてほしいとやって来た私達を温かく迎えてくれ、拙いインタビューにも丁寧に答えて下さった記憶があります。ラーメンも大きな餃子もとても美味しく、昔ながらの落ち着いた雰囲気が私には新鮮に感じられました。そんな場所が無くなってしまうのは寂しいですが、今は長い間ありがとうございましたという気持ちです。」

妹尾克利先生(非常勤講師、現代メディア論担当)
「インタビューの中で、店主が終戦直後に『丁稚』から修行でこの世界に入り、かつて『満鉄(満州鉄道)』の社食をしていた師匠から暖簾分けをしてもらったことなどを語ってくれるのですが、それに対し『でっち?』『まんてつ?』という学生たちの思いがけない反応が、このお店の歴史を開く小窓の役割を果たしています。また、録画モードのままテーブルに置かれていたカメラの前に、奥さんがサービスで餃子の皿を置いてくれるなど、心温まるハプニングも描かれています。
ドキュメンタリーは『偶然性の芸術』や『社会派エンターテイメント』と言われますが、地元の学生が地域を舞台にドキュメンタリー映像を制作すること自体が、地域の文化や産業、社会問題に触れる機会となります。大連軒の閉店の経緯を聞くと、日本の地方都市が抱える問題も内抱されているように思えます。今となっては、学生たちが新発田の一隅を照らしたこの作品も、偶然性の物語が描かれた貴重な文化的産物となりました。」