チャペルのひびき

過去と現在と未来をつなぐもの

チャペル・アワーは、田中利光先生(共生社会学科教授)が「「過去」と「未来」のあいだで」との題のもと、豊かなメッセージを届けてくださいました。先生は、ジブリ映画『千と千尋の神隠し』に描かれたカオナシという存在に触れつつ、名前(自分が自分であることの証)を奪われずに、人生をしっかりと生きてゆくことの大切さについて教えてくださいました。しっかり生きるとは、「過去」に学びつつ「未来」に向けて歩むこと、また「過去」にしっかりと向き合うことを通してこそ、「未来」が開かれてゆくのだということを説き明かしてくださいました。沖縄在住の美術家、阪田清子先生を講師としてお迎えしてもたれたアッセンブリ・アワーも豊かな時間となりました。自己紹介として、芸術を学び、沖縄に導かれてゆかれた経緯をお話しされた後、先生は、芸術表現とはいかなる行為かということを、分かりやすい図式を用いてお話しくださいました。そして、その表現行為の実践例として、ご自身の制作された映像作品をご紹介くださったのです。その作品は、海軍に入隊、大陸へ渡り、敗戦後、ソ連での抑留経験を余儀なくされたお祖父さまゆかりの地を巡るもの。そこに移された映像は、舞鶴、ナホトカ、ウラジオストクといった場所の、現代におけるなにげない静かな日常風景です。けれども、なにげない日常性ゆえにこそ、そこから、筆舌に尽くしがたき体験をされた人々の姿や思いが溢れかえってくるような不思議な作品でした。その不思議さは、何げない現代の日常の光景の中に過去を導き入れんとする先生の想像力によるものなのでしょう。過去と現在を重ね合わせ、未来につなげてゆく力としての想像力の意義について深く教えられたC.A.H.でした。(下田尾 治郎)

Ⅰ.チャペル・アワー 
説教 「「過去」と「未来」のあいだで」 教授 田中利光 先生
20191101チャペル・アッセンブリ・アワー1

Ⅱ.アッセンブリ・アワー
講話 「日常に想像力を持ち込むこと」 沖縄在住美術家 阪田清子 先生
20191101チャペル・アッセンブリ・アワー2

<参加学生の感想>
感想1) 田中先生から、「千と千尋の神隠し」で使われている曲を聞き、この映画に隠されているメッセージを教えていただいた。その中で最も印象的だったのは、過去から学び、現在を出発点とし、過去に学んだことを生かし、未来を見て生きるということです。出発点が現在なら、何を始めるにしろ遅いということはないと思うので、日々過去から学び生きていこうと思いました。
感想2) 田中先生から「過去」と「未来」のお話があり、「過去」である自分の経験を生かし「未来」の自分の人生を豊かにするために、今は何をがんばればいいのだろうか?と考えることが必要であることを学んだ。話の中にほとんど「現在」という言葉が入っていなかったのに過去と未来は現在の自分と近いところにあることがよく伝わってきました。
感想3) 「感覚」という言葉は何かを感じとる能力だけではなく、それを受け入れる力のことも意味として含まれていることを初めて知った。美術家の阪田先生が最新の映像作品を披露してくださったが、ロシアと日本のつながりや関係を歴史の面からとらえ、まさに受け入れている感じがしてとても美しかった。阪田先生は実際に見たもの、聞いたものから作品を生み出すと言われたが、「日常に想像力を持ち込むこと」というのは、「想像力から私たちは新しく何かをつくり出していける」ことだと感じました。
感想4) 阪田先生の言われた「日常に想像力を持ち込むこと」によって、自分の立ち位置への理解と他者への親近感を持つことができると分かりました。私も日常生活の中で想像力を働かせてたくさんの発見をしたいと思いました。