学長室だより

2002年6月2日号

学生時代からの友人、榊原胖夫君(元アメリカ学会会長、同志社大学名誉教授)が先日『アーモストからの手紙』(御茶の水書房)を出版しました。1954-57年のアーモスト大学とハーヴァード大学留学中に日本の仲間たちに書き送った手紙です。ぼくを含めて、仲間の連中は毎週送られてくる彼の手紙に惹きつけられ、あたかも自分自身もまたアメリカの大学に留学して、その苦労と喜びにあずかっているような、一種の疑似体験をしたことを思い出します。自分は心臓が弱く、引っ込み思案で、社交的でないと告白する彼が、最後には留学延長をめぐってコール学長と堂々と渡り合った話や、アメリカの女の子がなぜ美しく見えるのかを哲学的に分析してみせる手腕に感銘を受けます。ここに描写された異文化体験はいまなお価値を失わない原体験であり、50年代アメリカの知的、社会的、政治経済的、国際政治的雰囲気を甦らせる力を備えています。やがて図書館に備えますが、諸君のご一読をお奨めします。(北垣 宗治)