学長室だより

2003年12月19日号

久住(くすみ)和麿氏の指揮で「メサイア」の公演をきいた。
この新発田でヘンデルがきけるとは思ってもいなかった。しかも、相当の質の演奏がきけるとは。新発田メサイア合唱協会という団体が苦労をしてきたのであろう。指揮者の久住先生は1984年12月の第1回から、今回の第20回まで、全部通して指揮者の責務をはたされた。しかも今回の第20回で、新発田での公演は終わりなのだという。
いつものことであるが、わたくしは「ハレルヤ・コーラス」直後の、ソプラノのアリアに打たれる。「わたしは知っている。/わたしをあがなう方は生きておられ、/後の日に、ちりの上に立たれることを」(ヨブ記19:25)。この世はいかに荒れていようとも、いつの日にか、世の完成の時がくる。この救済論的歴史観こそが人類を救う。
イラクで命を落とした外務省職員の葬儀が、昨日東京でおこなわれた。そして明日は12月8日。昭和天皇が太平洋戦争勃発を命じた旧「大詔奉戴日」である。その真ん中に挟まれた12月7日に「メサイア」が、ここ新発田でうたわれた。久住先生の激しい指揮のお姿は、聴衆の脳裏ふかくに刻まれて、消えることはないであろう。(新井 明)