学長室だより

2005年7月8日号

坂東克彦氏といえば、新潟水俣病裁判で活躍した弁護士である。昭和電工がアセトアルデヒド生産の過程で垂れ流した有機水銀が、阿賀野川流域の多数にのぼる人びとを中毒症に、また長期にわたる後遺症の苦痛に、追い込んだ。国益・企業利益第一主義の風潮は、(すでに熊本・水俣病の発生原因は判明しているにもかかわらず)「臭いものには蓋を」の権威主義を通そうとした。新潟水俣病の第一次訴訟は被災者側の完全勝利であった。そのときの弁護側の幹事長が坂東弁護士であった。
6月18日(土)、19日(日)の敬和学園大学オープン・カレッジは「阿賀の流れに」のタイトルを掲げ、坂東弁護士にお越しいただいた。社会的弱者の立場を思う坂東氏の正義の論理と熱っぽい語りに60名ほどの聴衆は魅了された。素朴な労働者たちを社会悪から守ろうとする、純なるヒューマニズムの生きた声を聞いた。(二日目は坂東氏を先頭に、バス2台で阿賀野川を遡り、旧昭和電工・鹿瀬工場跡まで行き、また河口の悲惨な集落・松浜を訪れた。)(新井 明)