学長室だより

2006年3月24日号

2月半ばのことだが、ことしも「企業説明会」なるものが行なわれ、70社をこえる企業が、大学の体育館に集まった。開始予定時間30分まえに、3年次生が数十名、別の教室に集合して「出陣式」なるものをやった。
学長は「出陣」前の激励の訓示を求められる。―昔の話だが、「落ち穂ひろい」という話がある。収穫時には、畑に落ちた実まで拾い集めてはならない。落ちた実はやもめ、孤児、在留外国人たち、貧しい人びとのために取っておけ(レビ19の9-10)。現代でもまじめな貧者には、かならず道は与えられる。
わたし自身が「落ち穂ひろい」の人生だった。人生の岐路に立つとき、より良き(と思われる)道はひとに譲ってきた。しかも、残された他の道に勤(いそ)しむときに、思わぬ景色に恵まれてきた。きみたち、人生思わぬことがあっても、屈するな。上をみて励むことだ。真に良き道は待っていてくれることであろう!
これが若者たちにとっての励ましになったかどうか、わからない。ただ、財界の「即戦力」などにはなってもらいたくなかった。(新井 明)