学長室だより

2008年4月18日号

由布院といえば、別府の奥の、由布岳山麓の小さな温泉町でありながら、比較的短期間に「九州の軽井沢」として国中に名を轟かすにいたった所である。敬和学園大学はこの3月22日に「新発田学研究センター」の開所1周年記念事業として由布市議会議員の小林華弥子氏にお出でいただき、「由布院のまちづくり」なる講演をしていただいた。外資の乱入、景観の乱れなど、問題は山積しているが、由布院のもつ農村のよさが滅びないことを希いつつ、由布岳を仰ぎながら、この農村の生命を守る努力をしている一市議会議員の話に耳傾けた。予想を越える数の聴衆も熱心であった。
第2部のパネル・ディスカッションは、吉原悠博、M.フランク、能登剛史の三氏。それぞれの立場で町づくりに貢献している方がたの話、その問題提起には迫力があった。
小林華弥子さんは日本女子大学の英文学科の出で、卒論にO.ワイルドを選び、英文で長文の、いい論文を書いた。また大学の歌舞伎研究会に所属し、黙阿弥の「三人吉三廓初買」などを演じた。いまのわたしには卒論の指導教授としての思い出よりも、歌舞伎に興ずる一学生・小林の姿に強い郷愁を感ずる。義理人情のよさに打ち込んだ若き女性が、いま由布院の古き良さに打たれているのか。(新井 明)