学長室だより

2008年5月9日号

『北国の理想―クラーク精神の純化と展開―』の著者、大友浩先生を新発田にお迎えすることができた。新入生歓迎公開学術講演会の講師として、「学校・教育・教養を問い直す」を語っていただいた。もともとはフランス文学・思想の専門家で、パスカルを研究し、ボルドー大学で博士号までとった方である。
「教育」には二面がある。ひとつは規範を身につけさせる鍛錬の面。もうひとつは個のもつ価値を引き出す、という面。「教養」にしても、元来は、なにかとってつけたような知識、いわば飾りのごときものを指すのではなく、個人のもつ精神を「耕し」「形成」する力を意味する。このいわば「学び」と「形成」の二面が人を人として生かす原動力となる。
―こう語られる大友先生の背後には、人を鋳型にはめ込むをよしとした、戦前戦中の日本の教育への批判がある。国を愛するならば、国を超えた存在への配慮が必要だ。(このことは日本のみならず、世界各国にかんして言われなくてはならない。) クラーク博士の弟子たちに始まる札幌独立キリスト教会の現・主管者であられる大友先生の、宣教の心が、ここに現われた。(新井 明)