学長室だより

2016年度前期卒業式式辞(山田耕太学長)

20160928前期卒業式1

山田学長からの式辞

 

卒業生の皆さん、敬和学園大学ご卒業おめでとうございます。よくがんばりました。よく遣り抜きました。これで晴れて大学卒業です。皆さんの前には新しい歩みが待っています。ご就職おめでとうございます。日本で働く人もいるでしょう。国へ帰って働く人もいるでしょう。大学を卒業して、これから働くことになっても、忘れないでください。人生は学ぶことの連続です。

これからの学びは、学校生活や大学生活での学びとは違うかもしれません。仕事に関することの学び、顧客に関することの学びなど、新しいことを学んでいかなければならないかもしれません。第一に、あなたの人生を切り拓いていくのは、大学で身につけた学びの方法を基にして、一生学び続けていくことです。その覚悟をしてください。とりわけ、分からないことがあれば、上司の人や周りの人に質問をすること、自分が尋ねた質問の答えは忘れないものです。失敗を恐れずに、失敗した経験からも学ぶことが大切です。あるジャンルについて学び続け、10年間一つのジャンルについて学び続けると一角の人になります。一つのことを学び続けてください。 

第二に、人との出会いを大切にしてください。人生は出会いで決まるとも言います。この4年間の間にも、いろいろな人と出会ったことでしょう。これからもいろいろな人と出会って新しい道に歩みを進めていくことでしょう。新しい職場、新しい人間関係の中で心掛けていただきたいことが一つあります。それは先ほど読んでいただいた聖書の中のから、一つのエピソードを紹介します。

イエスが弟子たちと歩んでいると12弟子の間で誰が一番偉いのかという口論が始まり、ペトロと並ぶ弟子の中心的人物のヤコブとヨハネが、イエスに天の国に帰ったら、神の座の右と左に座らせてくださいと、イエスに勝手なお願いをします。それを脇で聞いていた他の弟子たちが、ヤコブとヨハネの兄弟の自己中心的な願いに対して腹を立てていると、イエスが次のように言います。

  「そこでイエスは一同を呼び寄せて言われた。「あなたがたも知っているように、異邦人の間では、
   支配者と見なされている人々が民を支配し、偉い人たちが権力を振るっている。しかし、あなたがたの間では、
   そうではない。あなたがたの中で偉くなりたい者は、皆に仕える者になり、いちばん上になりたい者は、
   すべての人の僕(しもべ)になりなさい。人の子は仕えられるためではなく仕えるために、また、
   多くの人の身代金として自分の命を献げるために来たのである。」(マルコ10:42-45)

異邦人とはユダヤ人から見た外国人を指しますが、ここではローマの政治的権力者である皇帝を揶揄しています。ローマ皇帝に代表される支配者は、軍事力に象徴される力で上から下に人を支配しているのに対して、イエスは「あなたがたの間では、そうであってはならない」と言っています。そうではなく、「あなたがたの間では人に『仕える人』になりなさい」とイエスは言っています。ここでのキーワードは「仕える人」です。この言葉は、元来は「食卓に食事などを運ぶ給仕」を意味する言葉でした。古代ローマ社会では、「給仕」は「奴隷」の仕事でした。イエスがここで言っている「仕える人」というのは一つの具体的なイメージを象徴的に用いているのです。

人と人の人間関係で大切なのは「人にサービスする心」であり、「人をもてなす心」です。権力を振り回して人の上に立って人を支配するのではなく、「人に仕え、サービスし、もてなす人になりなさい」とイエスは口論する弟子たちに向かって教えたのです。そういう人こそが職場や人間関係の中でリーダーとなっていくのです。これは現代では「サーバンド・リーダシップ」という新しいリーダー論の根拠になっている個所です。皆さんも仕事を通して「人に仕える人」になることを心掛けてください。

持続して学ぶ姿勢、人との出会いを大切にして「人に仕えること」を申し上げました。私は皆さんを今、社会に送り出そうとする時に、イエスが弟子たちを平和をもたらす使者として社会に送り出した時のような心境に少し近い気持ちです。イエスは弟子たちに言いました。「行きなさい。私はあなたがたを遣わす。それは狼の群れに小羊を送り込むようなものだ」(ルカ10:3)。狼の群れの中に羊を送り出すような心境とはどんな気持ちでしょうか。この世の中には良い人ばかりではありません。善良の人のような顔をして、悪いことを考えている人も中にはいます。そのような人を見分ける知恵も必要です。イエスはこうも言っています。「ヘビのように賢く、鳩のように素直であれ」(マタイ10:16)。「雄々しくあれ、強くあれ。」堂々と生きよ。豊かな祝福あれと祈ります。

2016年9月28日
敬和学園大学長 山田耕太