学長室だより

2005年4月15日号

学園は新入生を迎えて、まさに「新」学期が始まった。キャンパスの桜はまだまだ遅咲きであるが、それでも早い枝はほころび始めた。
3月18日の卒業式と4月4日の入学式と、双方でヘンデルの「メサイア」の「ハレルヤ・コーラス」が合唱された。昨年と同じように卒業式と入学式とで一般社会人の方がた14名が、在校生約20人とともに、石川美佐子さんの指揮と諏訪薫さんの伴奏で歌ってくださった。皆さんの協調のうえに成り立った時間であった。
人間は一人ひとりが別である。一人ひとりに個性がある。合唱の営みは、その一人ひとりが個性を殺すことなく、声を合わせて、より大きな、より高尚な全体を生み出してゆく営為である。この春の二つの「ハレルヤ」(「主をたたえよ」)は、いま世界を覆っているエゴイズムの強化、またその正当化をたしなめるだろう。世界に協調と歓喜をもたらす基本は、この「ハレルヤ」の叫び以外にはないのではないか、ということを、考えさせるものがあった。
ひとつの大学の卒業式と入学式は、その学園の行事の域を、はるか超える意味を今年も教えてくれた。(新井 明)