木を育てるように(2代目学長 新井明)

2007年10月12日号[2007-10-12]

図書館で調べものがあり、ちょっと学長室を空けていた時間帯に、だれかが大きな包みを置いていった。書類かなにかかと思って開けてみると、茄子(なす)の漬物ではないか。数十個。見ると置手紙がついている。「あらい学長先生へ」と大きく書いてあって、そのあと――「なす漬け。おばあちゃんのお手製です。はやくたべないとくさります。はやくね」。
ふつう学長室にとどけられる種類の品物ではない。とたんに「家庭」ということばが頭に浮かんだ。事務室へ行って相談してみたが、食べてもらえなかった。その日は学長室を早めに退去して、自宅に包みを持ち帰り、茄子づけを口にした。小柄のかわいらしい茄子が、薄塩で、軽く漬けてある。なんとおいしいことか。お茶にちょうどいい。
翌日は柏崎に行く日であった。そうだ、かの被災の地へ茄子漬けを運んでいこう、と決意した。柏崎はひどかった。ボランティアとして若者たちとともに力を出し、お昼をむかえた。その場に「おばあちゃんのお手製」を出した。留学生たちを交えたグループで、それはほぼ一瞬にして消えた。(新井 明)

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