学長室だより

2008年11月7日号

韓国「孤児の母」として知られる田内千鶴子さんのご長男・尹基(ユンギ)氏が10月4日に大阪からお出でくださった。共生社会学科主催学術講演会に。おもに関西地区で在日韓国人のための老人ホームを建てて、苦労してきた方がたに憩いの場を提供していらっしゃる。自己中心的な世相の只中で、こういう生き方を実践しておられる尹さんの話は、人間としての生き方そのものに、深く反省を迫るものであった。とくに、隣国に無謀な苦しみを与えたことを知るものにとって、日本人こそがお詫びの心をもって果たさなくてはならないことを、ほかならぬ尹さんが実践していてくださる。「日本と韓国の架け橋」。言うは易いが、じっさいに生涯をかけて、その「橋」となることは、たやすいことではない。 母上・千鶴子さんと、その後を継いだ息・基さん。2代にわたる強靭な「架け橋」。聴衆は学生87名、一般の社会人29名。「夢・自立・文化」と脹らむ話は、実践を背景にした内容であるだけに、聴衆のこころに深くしみこんだ。(新井 明)