学長室だより

2009年3月6日号

3月1日午後、まちの駅よろず「新発田学研究センター」の開所2周年を記念し、第一回「阿賀北ロマン賞」授賞式を行なった。まず、「三田文学」編集長・加藤宗哉氏の「体験することと書くこと ― 遠藤周作にまなんだこと ―」を聴いた。遠藤の生の姿を語りつつ、創作の世界に呼び込まれてゆく加藤氏の告白的講演に140名ほどの聴衆は感じ入った。続いて、新井明、加藤僖一、北嶋藤郷の三氏がそれぞれ芭蕉、良寛、会津八一を取り上げて、「越後と文学」を語った。
その後が、「阿賀北ロマン賞」の授賞式。北海道から沖縄にいたる29都道府県から175編を数える応募作品が届いていた。小説、随筆、創作童話・児童文学の各部門から、杉原泰洋、西村優輝(高校生の部)、石田瑞穂、井浦尚子の諸氏が、敬和学園大学長から大賞を受けて下さった。その他、優秀賞、特別賞など。加藤宗哉氏の講評は、物書きの皆さんを勇気づけるものであった。県副知事・森邦雄氏が馳せ参じてくださり、祝辞を賜った。
この企画を進めるにあたり、県の新発田地域振興局、新発田市、同商工会議所、また60になんなんとする団体や企業からのご協力をいただいた。「産官学の協力」の下で、とは、よく言われることではあるが、今回のごときケースは、ざらにあることではない。心に響く虚構の世界が創出されたことで、現実を生きる人びとは新たなる力を得ることになるであろう。簡素なパーティのあと外へ出ると、雪に覆われた阿賀北の山並みと、その上の空の星々が、いちだんと鮮やかに目に映った。(新井 明)