学長室だより

古代イスラエルのレヴィラート婚

男子には名を残す責任がありました。本人が子を残さず死んでしまった場合を避けるため、レヴィラート婚(義兄弟婚)と呼ばれる制度があったのです。夫に先立たれた妻をその亡夫の兄弟が娶り、名を継ぐべき子をもうけるという慣習でした(申命記25章5節~10節)。この規定では、他の兄弟が義理の姉妹を娶ろうとしない場合が想定されています(7節)。彼女は町の門での長老裁判で、義務を果たそうとしない彼を提訴しなければなりませんでした。その兄弟が彼女を娶りたくないと主張するならば、彼女は彼の足から靴を脱がせ、その顔に唾を吐き「自分の兄弟の家を建てようとしない男には、このようにすべきです」と言い放つしきたりでした。その兄弟の家は、靴を脱がされた者の家と呼ばれるようになるというのです。
相性や感情の問題というより、亡夫の相続権を失う可能性が彼女にあったからです。この手続きを経ないでは再婚もできませんでした。この手続きなしに他の男と結ばれると、姦通の疑いをもたれ石打の刑にあう危険もありました。
王国滅亡後、全世界に離散して住むようになってから、この制度は正式に禁止されるようになったのです(レビ記20章21節)。(鈴木 佳秀)