学長室だより

ルツとナオミ・その10

愛するルツのため、ナオミは思いをめぐらせていたようです。刈り入れが終わると、麦打ち場で麦をふるい分ける作業が始まります。その時を見計らって、ナオミはルツに「わたしの娘よ、わたしはあなたが幸せになる落ち着き先を探してきました。あなたが一緒に働いてきた女たちの雇い主ボアズはわたしたちの親戚です」(ルツ記3章1節~2節)と打ち明けます。
ルツが幸せになる落ち着き先という言葉は、再婚相手のことを意味しています。それがどうして可能なのでしょうか。レヴィラート婚では、ナオミの胎内から生まれた男子がルツを娶る責任を持つのですが、夫を亡くし年老いているナオミにその可能性はありません(1章11節)。しかし、エリメレクの親戚がその責任を代わって担うという道は存在していたのです。レヴィラート婚は、婚姻形態に力点があるのでなく、夫であった者が継承すべき相続、先祖代々の土地の管理責任の継承にこそその目的があったからです。
エリメレクの親戚であるボアズを、ナオミが「わたしたちの家を絶やさないようにする責任のある人の一人です」と語ったのは、ルツを媒介に土地の継承相続(名義の継承)を考えていたからです。しかもそれを実行できる責任者はナオミ自身なのです。(鈴木 佳秀)