学長室だより

ルツとナオミ・その16

「夜半になってボアズは寒気がし、手探りで覆いを捜した。見ると、一人の女が足もとに寝ていた。『お前は誰だ』とボアズが言うと、ルツは答えた。『わたしは、あなたのはしためルツです。どうぞあなたの衣の裾を広げて、このはしためを覆ってください。あなたは家を絶やさぬ責任のある方です』」(ルツ記3章8節~9節)を見ると、ルツの応答はナオミが指示した通りでなかったことは明らかです。
「あなたは家を絶やさぬ責任のある方です」も、「責任のある人の一人です」でなく、あなたこそ責任のある方ですという断定に近い表現になっています。「どうぞあなたの衣の裾を広げて、このはしためを覆ってください」と口にしたルツの言葉も、ナオミが授けた言葉ではありません。「その後すべきことは、あの人が教えてくれます」(4節)とルツに指示しただけでした。
わたしを受け容れてください、家を絶やさないようにするのは、あなた以外にはいませんとルツは自らの言葉で告白したのです。求愛行為に近い行動を行なうよう指示したナオミは、ボアズの人柄を信頼し、ルツのひたむきさに委ねたのです。人為的な企てであっても、すべての結末を神の御手に委ねるナオミの信仰が、そこに現われています。(鈴木 佳秀)