学長室だより

ルツとナオミ・その20

町のおもだった人がルツを「立派な婦人であること」を知っていたと伝えています(ルツ記3章11節)。「立派な」の原語はハイルで「力、能力、富、軍勢」などの意味があります。ギッボレー・ハイル(「勇士」の意)のように、男性に使われると英雄を形容する言葉になります。ルツは女性ですから、日本流に言えば、芯の強い、貞節な武家の妻とでも言うべきでしょうか。夫が亡くなった後もナオミに仕え、生まれ故郷を後に彼女に従ってベツレヘムに渡ってきたルツを、町の人たちは意志の強い信念の人とみていたのでしょう。「モアブの女」という冷ややかな、心ないまなざしは消えています。町の人々が、自立した女性としてルツを誉めているのですが、その評判をこの言葉が語っています。
しかしひとつ間違えば、汚名を着せられ石打の刑に処せられるかもしれない状況で、ナオミの指示に従ったルツの勇気ある行為を聖書は語っています。麦打ち場に下っていき、生命がけでボアズの側に忍んできて横になったルツを、聖書は「立派な」という評価を伝えていますが、彼女の強さは、愛するがゆえの強さと言うべきでしょう。またそれは、すべての結末を神に委ねきる信仰の強さでもあります。(鈴木 佳秀)