学長室だより

ルツとナオミ・その21

人の見分けのつかない早朝に立ち上がったルツに、ボアズは大麦6杯をはかって彼女の肩掛けの中に入れ、ルツに背負わせ、町に帰らせたと聖書は語ります(ルツ記3章14節~15節)。ナオミのところに無事に戻ったルツに、「娘よ、どうでしたか」と彼女は尋ねています。この言葉から、自分が授けた策がどのような結末になったかについて、彼女がどれほど心を砕いていたかがよく分かります。夜も眠らずに心配していたのでしょう。ルツは、ボアズがしてくれたことをもれなく彼女に語り、大麦を見せ「あなたのしゅうとめのところへ手ぶらで帰すわけにはいかないとおっしゃって、あの方がくださったのです」と応じています(16節~17節)。
「わたしの娘よ、成り行きがはっきりするまでじっとしていなさい。あの人は、今日中に決着がつかなければ、落ち着かないでしょう」とナオミは語っています(18節)。こう語る彼女の言葉にも、ルツの応答にも、静かな安堵感が漂っています。想いが通じたことをルツは告白していませんが、彼女が無事に帰ってきたことに、ナオミは神の導きを見たのです。ボアズの気持ちを推し量るナオミの言葉から、ボアズを見込んでの策であったことが分かります。(鈴木 佳秀)