学長室だより

ダビデの物語・ダビデの台頭史その15

「ダビデは、サウルが派遣するたびに出陣して勝利を収めた。サウルは彼を戦士の長に任命した。このことは、すべての兵士にも、サウルの家臣にも喜ばれた」(サムエル記上18章5節)とあるように、ダビデの人生は大転換を遂げたのです。神がかりの働きをしたことで、ペリシテ軍がダビデを恐れたのは自然の流れでした。新しい英雄が誕生したのです。しかしもうひとりの油注がれた英雄の目に、彼の活躍はどのように映ったでしょうか。ダビデが勝利を収めて帰って来ると、イスラエルのあらゆる町から女たちが三弦琴を奏でて迎え「サウルは千を撃ち、ダビデは万を撃った」と歌い交わしたことで、上下関係が一変します。
サウルはこれを聞いて激怒し「ダビデには万、わたしには千。あとは、王位を与えるだけか」と言い放ったとあります(8節)。カリスマ的指導者と仰がれていた人物が、自分以上に活躍するダビデの姿を見て嫉妬したのです。「この日以来、サウルはダビデをねたみの目で見るようになった」(9節)と伝えています。男の嫉妬は、時として感情の問題では終わらず、嫉妬する相手の立場を失わせようと狡猾な手段を講じ、場合によってはその人の生命を脅かすことも起こりうるのです。(鈴木 佳秀)