学長室だより

ダビデの物語・ダビデの台頭史その33

ナバルの突然の死は脳溢血かショック死と思われますが、当時の人々の目には主なる神に打たれたとうつったようです(サムエル記上25章38節)。ナバルの死を聞いたダビデは「主はたたえられよ。主は、ナバルが加えた侮辱に裁きを下し、僕に悪を行わせず、かえって、ナバルの悪をナバルの頭に返された」と語っています(39節)。未亡人となったアビガイルに人を遣わし、ダビデは彼女を妻にしたいと申し入れています。ダビデとアビガイルのエピソードは、長くダビデの宮廷で語り伝えられたものと推測されます。
使者であるダビデの部下から聞かされた彼女は、地に伏して礼をし、ダビデに対し「わたしは御主人様の僕たちの足を洗うはしためになります」と応じています(41節)。彼女は侍女五人を連れてダビデの妻となったのですが、聡明で美しい女性であったアビガイルを妻に迎えたことで、ダビデはどれほど大きな支えを得たことでしょう。逃亡生活の中で確固とした生活基盤を得たからです。二人妻婚の制度があったパレスチナですから、アビガイルはいわゆる第二妻となります。しかし他方、ダビデの正妻であったミカルは、父サウルによって強制的に離別させられ、ガリム出身のライシュの子パルティに与えられたと聖書は伝えています(44節)。ミカルの悲しみが伝わってきます。(鈴木 佳秀)