学長室だより

ダビデの物語・ダビデの台頭史その46

ユダ部族の王とされたダビデは、ギレアドのヤベシの住民がサウルを丁重に葬ったことを知り、使者を遣わし「あなたがたが主に祝福されますように。あなたがたは主君サウルに忠実に尽くし、彼を葬りました。今、主があなたがたに慈しみとまことを尽くしてくださいますように。わたしも、そうしたあなたがたの働きに報いたいと思います」(サムエル記下2章5節~6節)と伝えています。そして自分がユダの家の王となったことを知らせています(7節)。イスラエル諸部族は、サウル王を失ったことで離散してしまう危険にあり、このままではペリシテの支配に服さざるをえなくなったからです。
「サウルの軍の司令官、ネルの子アブネルは、サウルの子イシュ・ボシェトを擁立してマハナイムに移り、彼をギレアド、アシュル人、イズレエル、エフライム、ベニヤミン、すなわち全イスラエルの王とした」(8節~9節)と聖書は伝えています。サウルを失った軍勢は敗走し、無力化される瀬戸際でした。そこでサウル軍の司令官であったアブネルは、軍隊組織を維持するためサウルの子を王に据えたのです。油注がれた指導者でなく、世襲によりその子が王位を継承する事態となりました。
ダビデはサムエルによって油を注がれた人物ですが、イシュ・ボシェトに軍事的なカリスマはありませんでした。(鈴木 佳秀)