学長室だより

ダビデの物語・ダビデの台頭史その48

「サウル王家とダビデ王家との戦いは長引いたが、ダビデはますます勢力を増し、サウルの家は次第に衰えていった」とサムエル記は伝えます(下3章1節)。サウルの出身部族ベニヤミンの勇者たちはサウルへの忠誠を守っていましたが(2章25節)、イシュ・ボシェトへの忠誠も維持されていたのでしょうか。「サウル王家とダビデ王家の戦いが続くうちに、サウル王家ではアブネルが実権を握るようになっていた」とテキストが語っているからです(6節)。イシュ・ボシェトをサウルの後継者に仕立てて軍を立て直し、アブネルがサウル軍の危機を救ったからですが、結局、二人の関係は女性問題で決裂してしまいます。
「アヤの娘でリツパという名の女がいた。この女はサウルの側女であった。ある日イシュ・ボシェトはアブネルに、『なぜ父の側女と通じたのか』と言った。アブネルはイシュ・ボシェトの言葉に激しく怒って言った。『わたしをユダの犬どもの頭とでも言われるのですか。今日までわたしは、あなたの父上サウルの家とその兄弟、友人たちに忠実に仕えてきました。あなたをダビデの手に渡すこともしませんでした。それを今、あの女のことでわたしを罪に問おうとなさる』」と抗議しています(7節~8節)。実は、サウル王の側女の身請けは王位継承者だけに許されることでした。(鈴木 佳秀)