学長室だより

ダビデの物語・ダビデ王位継承史その26

不倫によって生まれた子供が亡くなった後、ダビデとバト・シェバの間に生まれたのがソロモンです。この王子こそが、ダビデの晩年に、王位継承の中心人物となって登場してくるのです。ダビデ王位継承史は、サウルの娘であった妻ミカルに子供が生まれなかったことから説き起こされ、バト・シェバとの不倫事件の顛末を伝え、ソロモンの誕生をこの時点で語っています。この叙事詩は、ナタンが預言した神の裁きがダビデの生涯の中でどのような形で実現していくのかを辿るという、伏線を持っているのです。
ダビデはアンモン人の首都ラバを陥落させエルサレムに凱旋します(サムエル記下12章29節~31節)。勝利に沸いているエルサレム宮廷では、ダビデ以外にナタンの預言を知る人はいませんでした。「その後、こういうことがあった」という書き出しで、叙事詩は続く悲劇の始まりを語り始めます。「ダビデの子アブサロムにタマルという美しい妹がいた。ダビデの子アムノンはタマルを愛していた。しかしタマルは処女で、手出しをすることは思いもよらなかったので、妹タマルへの思いにアムノンは病気になりそうであった」(13章1節~2節)と聖書は伝えています。異母兄妹であるタマルに恋心を抱いてしまったアムノンの想いは、許されないものでした。宮廷内で、この悲恋はどのような展開を見るのでしょうか。(鈴木 佳秀)