学長室だより

ダビデの物語・ダビデ王位継承史その37

「アブサロムは逃亡した。見張りの若者が目を上げて眺めると、大勢の人が山腹のホロナイムの道をやって来るのが見えた。ヨナダブは王に言った。『御覧ください。僕(しもべ)が申し上げたとおり、王子たちが帰って来られました。』ヨナダブがこう言い終えたとき、王子たちが到着した。彼らは声をあげて泣き、王も家臣も皆、激しく泣いた。アブサロムは、ゲシュルの王アミフドの子タルマイのもとに逃げた。ダビデはアムノンを悼み続けた。アブサロムはゲシュルに逃げ、三年間そこにいた。」(サムエル記下13章34節〜38節)
アブサロムは、母の実家ゲシュルの王タルマイのもとに亡命したのです。アムノンの親族から血の復讐を受け、自分が殺される危険があったからです。アブサロムは、王とアムノンの両方を饗宴に招待したのですが、父に対する殺意も持っていたのでしょうか。アムノンを殺害し、兄弟殺しの裁きを逃れゲシュルに亡命したことは、これで終わりにするつもりはないということを暗示しています。
他方ヨナダブは、自分の見通しが的中したかのように王に告げています。自分が言ったとおり王子たちが無事であったことを力説し、いつの間にか自分の責任を帳消しにしたかのようです。保身しか考えない側近が周りにいたことは、ダビデにとって不幸なことでした。剣がダビデの家から去らないことを裏付ける事件となりました。(鈴木 佳秀)