学長室だより

ダビデの物語・ダビデ王位継承史その41

ヨアブの狙いはどこにあったのでしょう。「女は言った。『主君である王様、はしためにもうひと言申し述べさせてください。……主君である王様、それではなぜ、神の民に対してあなたはこのようにふるまわれるのでしょう。王様御自身、追放された方を連れ戻そうとなさいません。王様の今回の御判断によるなら、王様は責められることになります。……神は、追放された者が神からも追放されたままになることをお望みになりません。そうならないように取り計らってくださいます。王様のもとに参りまして、……王様に申し上げれば、必ずはしための願いをかなえてくださると思いました。王様は聞き届けてくださいました。神からいただいた嗣業の地からわたしと息子を断ち滅ぼそうとする者の手から、はしためを救ってくださいます。はしためは、主君である王様のお言葉が慰めになると信じて参りました。主君である王様は、神の御使いのように善と悪を聞き分けられます。あなたの神、主がどうかあなたと共におられますように。』」(サムエル記下14章12節〜17節)
血の復讐を行なう者から息子を救い、殺されることはないと保証してくれたのに、王御自身がアブサロムに恩赦を与えないのはなぜですか、と女は訴えたのです。自分の息子と同じように、王の判断で追放されたアブサロムも赦され連れ戻されるはずですと。実に巧妙な取引ではないでしょうか。(鈴木 佳秀)