ダビデの物語(3代目学長 鈴木佳秀)

ダビデの物語・ダビデ王位継承史その54[2013-04-26]

「アブサロムはイスラエル人の兵士を全員率いてエルサレムに入城し、アヒトフェルも共にいた。ダビデの友、アルキ人フシャイはアブサロムのもとに来て、アブサロムに向かって言った。『王様万歳、王様万歳。』アブサロムはフシャイに言った。『お前の友に対する忠実はそのようなものか。なぜ、お前の友について行かなかったのか。』フシャイはアブサロムに答えた。『いいえ。主とここにいる兵士とイスラエルの全員が選んだ方にわたしは従い、その方と共にとどまります。それでは、わたしは誰に仕えればよいのでしょう。御子息以外にありえましょうか。お父上にお仕えしたようにあなたにお仕えします。』(サムエル記下16章15節〜19節)
ダビデが送り込んだフシャイの口上は、面従腹背でしかありません。王権の「正当性」に従う姿勢を取るのは、相手を騙す方便でした。神の名において即位したアブサロムに仕えるため「王様万歳」と叫ぶのは、欺瞞(ぎまん)です。権力闘争の舞台で王権の「正当性」のため神が利用されている事実を、この叙事詩は隠そうとしません。フシャイの欺瞞をアブサロムは見抜けなかったのです。公的に「正当性」を帯びた王に仕えるのは当然という彼の口上を信じたことで、アブサロムの思惑とは別の方向に事態は展開してしまいます。神の名において油を注ぐ儀式が「正当性」の道具として使われたのです。この叙事詩は、それを雄弁に物語っています。(鈴木 佳秀)

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