ダビデの物語(3代目学長 鈴木佳秀)

ダビデの物語・ダビデ王位継承史その55[2013-05-02]

「アブサロムはアヒトフェルに、『どのようにすべきか、お前たちで策を練ってくれ』と命じた。アヒトフェルはアブサロムに言った。『お父上の側女たちのところにお入りになるのがよいでしょう。お父上は王宮を守らせるため側女たちを残しておられます。あなたがあえてお父上の憎悪の的となられたと全イスラエルが聞けば、あなたについている者はすべて、奮い立つでしょう。』アブサロムのために屋上に天幕が張られ、全イスラエルの注目の中で、アブサロムは父の側女たちのところに入った。」(サムエル記下16章20節〜22節)
王権の交替に際して、アヒトフェルは王となったアブサロムに驚くような提言をしています。父の側女たちのところに入るように勧めたからです。姦淫に相当する行為ですが、王権をめぐる当時の考え方をふまえないと、この提言はよく理解できないかもしれません。王権を簒奪(さんだつ)した側では、前王の資産や権限をすべて引き継ぐのが当たり前でした。前王が実父であれ、その側女たちは国家が新しい体制に引き継がれる際の、象徴的、儀礼的な意味を帯びていたからです。前王の側女たちを継承するのは、王権を掌握した者の義務に等しい重みを持っていました。王権を奪われた側の父は、まだ存命であっても既に死んだ存在だと宣言することになるからです。それを臣下たちに見せつけるため、アヒトフェルは敢えて提言したのです。王権の「正当なる」継承を誇示した行動なのです。(鈴木 佳秀)

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