学長室だより

パーソナルコンピューターの出現

ワードプロセッサーが小型化され、価格も下降し、個人で購入することが一般的になった頃でした。コンピューターの世界に、マッキントッシュがデビューしてきたのです。小型テレビのようなスタイルで、リンゴマークがかわいらしい、と映ったのを覚えています。しかし、別の世界の話だと思っていました。わたくしには、ワープロがあれば充分だ、と思い込んでいたからです。
新しい商品が出ても、興味を持ちませんでした。しかしある時、偶然に新約聖書のギリシア語のテキストのコピーを見せられたのです。心底、衝撃を受けました。東京で開催される聖書学研究所の例会に出たときに、それを見せられたのです。電動式タイプライターでギリシア語の本文をタイプしたことはありますが、そのコピーの印字があまりに美しく、思わずその出所を聞いたのです。その時に、マッキントッシュで打ちだしたもので、そのソフトが使えるという情報を得たのです。俄然、落ち着かなくなってしまったのです。旧約聖書のヘブライ語のソフトもあるのですか、と聞いたのは自然の流れです。そのうち出ます、という返事でした。新潟大学に戻り、ワープロ仲間にその話をしたのですが、自分は余り必要としないね、という返事でした。人文科学系列の同僚に、マッキントッシュにはまっている人がいるというので、研究室を訪ねました。心理学の若手の先生でしたが、丁寧に、パーソナルコンピューターの仕組みや、マッキントッシュのどこがいいのかを、説明してくれたのです。当時はIBMのコンピューターが流行の最先端でした。しかし、ギリシア語とヘブライ語が打ち出せるソフトがあるという情報だけで、マッキントッシュファンになった次第です。その他の理由はありませんでした。(鈴木 佳秀)