学長室だより

一羽で飛ぶ白鳥

その後、田んぼの雪は消えたのですが、早速、幾組かの群れが舞い降りて餌をついばんでいました。食べているのは、落ち穂はもちろんのこと、水が残っている田んぼに生える稲の新芽や根、藻や水草のたぐい、マコモの根や茎だと言われています。舞い降りてくる白鳥の群れにも、多様なグループがあるのが分かります。家族と思われる数羽で舞い降りる場合が多いのですが、二羽で飛んでいく姿も結構見かけます。あれはつがいなのだろうと、勝手に想像しています。
今年始めて見たときにはびっくりしたのですが、一羽で飛んでいる白鳥がいるのです。田んぼの上を旋回して下りるべき場所を探しているのです。これは幼鳥ではないと瞬時に思いました。最低でも二羽で飛ぶ姿が見られるので、もしかして、相方を失った白鳥ではないかと思った次第です。田んぼに下りていくときも、既に舞い降りていく群れの近くに下りるのですが、遠慮がちに餌を探し始めるのです。歓迎されていないのが分かると、一羽でさっと飛び去ります。その光景を見ると、何やら寂しい気持ちになります。家族の絆の強い渡り鳥だと聞いていますから、あの一羽は、無事に北国に帰ることができるのだろうか、と心配になります。大学の上を、鳴き声を掛け合いながら下りてくるときも見事なV字形の群れをなして飛んできますから、北に帰るときも、見事なV字形を形成し、お互いに鳴き声をかけあいながら飛んでいきます。一羽だけでは、長旅を続けることは出来ないのではないか、と思えてならないからです。偶然に群れからはぐれてしまった一羽であって欲しいと願う気持ちに変わりはありませんが、もし相方をなくしたのであっても、必死で生きているので、頑張れと声をかけざるをえません。(鈴木 佳秀)