学長室だより

2016年度卒業式式辞(山田耕太学長)

20170324卒業式

卒業式で式辞を述べる山田学長

 

阿賀北の地にも、ようやく花咲き、鳥歌う春が巡ってまいりました。卒業生の皆さん、またご家族の皆さん、ご卒業おめでとうございます。今日は136人が卒業しますが、ここに至るまでに136のドラマがあったと思います。人生で最も大切なかけがえのない大学時代を敬和で過ごし、一人ひとりが、悩みや不安を抱えつつも、たくましく成長されたことをうれしく思います。皆さんが大学で身につけた知識と価値観は、平均寿命で考えるとこれから60年以上生きていく力となり、生きる指針となることを確信しています。大学は生涯教育の始めです。これからは自分自身が自分の先生となって、絶えず学び続けていくことに心掛けてください。これからは大学で学んだ知識とは異なる職業に関する知識や顧客に関する知識かもしれませんが、絶えず学び続ける姿勢を忘れないでください。

この春からは社会人として全く新しい環境の中で、新しい生活が始まっていきます。人生の旅立ちへのお祝いとして、先ほど読んでいただきました新約聖書のローマ書(12章9-17節)の中から、パウロがローマの人々にいかに生きるべきかを述べた勧めの言葉をはなむけとしてお贈りします。

第一に、友人との関係についてです(9-10節)。「愛には偽りがあってはなりません」という「真実の愛」についてです。皆さんは大学での演習や実習などのさまざまな学びの中で、あるいはクラブ・サークル活動やボランティア活動やアクティブラーニングなどの活動の中で、さまざまな人と出会い、その中で得た友人を大切にしてください。友人は一生の宝です。大学で助け合った友人は、おそらくこれから一生つき合うことになる友人です。「兄弟愛をもって互いに愛しなさい」とあるように、これからも「友情」という「真実の愛」をもって兄弟のようにつきあっていくことでしょう。その「友情」を保つ秘訣は「尊敬をもって相手を優れた者と思う」点です。相手に自分にはない優れた点があることを認めることが「友情」が続いていく秘訣です。これは「友情」ばかりでなく、社会人となって人との付き合いで大切な点です。「我以外皆我師」(私以外の皆が私の先生である)という謙虚な心が大切です。

第二に、自分との関係についてです(11-12節)。皆さんは今までもしばしばさまざまなことに挑戦し「怠らす、励んで」きたと思います。そしてさまざまな面で成長しました。これからも自分に与えられた仕事には「怠らすに、励んで、霊に燃えて、すなわち心の内に闘志を燃やして」「人に仕えること」「人にサービスすること」を心がけましょう。「隣人に仕えること」は、「神に仕えること」につながるのです。しかし、人生の中には「希望と喜び」に溢れた晴れの日もあれば、「苦しみ」「悲しみ」に耐えなければならない雨の日や雪の日もあります。そのような辛い日々には「祈り心」でじっと忍耐することも大切です。八方ふさがりで四面楚歌の時は、大空を見上げて天を仰いでみましょう。

第三に、他の人との関係についてです(13-17節)。「聖なる者たちの貧しさ」すなわち「清く貧しい人々」に象徴される「名もなく弱く傷ついた」人々に寄り添って「自分のもの」すなわち「我がこと」として「助け」、「旅人」に象徴される身寄りのない人をもてなす心(ホスピタリティ)を大切にしましょう。反対に、あなたに対して悪口を言ったり、ひどい仕打ちを受けたりすることが、長い人生の中で起こるかもしれません。その時には悪に対して悪で仕返ししないで、かえって祝福を祈りましょう。他者との関係である「隣人愛」をパウロの言葉を用いて一言で表現すれば、「喜ぶ人と共に喜び泣く人と共に泣きなさい」ということになります。自分に対してうぬぼれることなく、誰に対してもよいことを行うように心がけていきましょう。

イエスは弟子たちを社会の中に派遣する時に、次のような言葉で結びました。「私はあなた方を遣わす。それは、狼の群れに羊を送り込むようなものだ。だから、蛇のように賢く、鳩のように素直でありなさい」。人間にはある面では狼のような獰猛な一面があり、また羊のような従順な一面もあります。世の中の人はすべてが善良な人々とは限りません。そのような世の中を渡って行く時に、弟子たちに忠告したのは「蛇のように賢く、鳩のように素直になりなさい」という勧めの言葉でした。

地面を這う蛇は、知恵のある「賢さ」の象徴でもあり、「現実」を直視する象徴でもあります。空を飛ぶ鳩は、「素直さ」の象徴でもあり、視野の広い「理想」を見る象徴でもあります。私たちも現実をしっかりと見つめると同時に、「理想」を失わない目も併せ持ちたいです。皆さんの存在を根底で支えていてくださる神さまが、皆さんの生涯を通して共にいてくださり、祝福してくださいますように心からお祈りします。

2017年3月24日
敬和学園大学長 山田耕太