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PDE INter-Universityニューズレター:第33号
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「全国高校哲学エッセイコンクール」あらため
「日本倫理・哲学グランプリ」のお知らせ

 

「人は何のために生きているのだろう?」
「自分が自分であるとはどういうことだろう?」
「人と人とが分かり合えるとはどういうことだろう?」

 こんな問いは、みなさんも一度や二度、考えたことがあるでしょう。すでに、自分なりの考えを持っている人もいるかもしれません。
こういう、誰にも関わるような人生と世界の根本的な問題を、自分の頭で問い、徹底的に考え抜くのが、「哲学する」ということです。そして倫理学は哲学の重要な一部門です。

 「哲学」と聞くと何だか難しく、縁遠いもののように思えるかもしれません。けれども、こんなふうに受け止めてみると、実は誰にとっても他人事ではないことがわかるでしょう。
哲学というものの本体は、「問うこと」「問題意識」にあります。世に「哲学者」と言われる人たちは、こうした問題意識を人一倍問い詰め、独自の考えを築いていった人たちにほかなりません。
そういう問題をみなさん一人ひとりが考えるということは、哲学者たちと同じ問題を問うということです。

 若いみなさんがこうした根本的な問題について考えた成果を、ひとつのコンテストに参加することによって試してみよう――そう思った方は、この「日本倫理・哲学グランプリ」にぜひとも応募してみてください。第一次選考では日本語でエッセイを書いていただき、それを通過した人には第二次選考で、別の主題にもとづき英語で書いていただきます。

 応募資格は、中学生または高校生であることです。応募作品を審査した結果、金賞2人、銀賞2人、銅賞3人を表彰します。

 このグランプリは2012年5月16日~20日に、ノルウェーのオスロで開催される第20回国際哲学オリンピック(International Philosophy Olympiad, 略称IPO)の予選を兼ねています。グランプリで金賞を獲得したお二人がそれに出場できます。IPOは日本を含む世界二十数か国の高校生が、思索力や論理的議論の力を、外国語による表現をとおして競う哲学エッセイのコンテストです。来年のIPO大会の概要は www.philosopiad.org に掲載される予定です。従来のIPO大会の概要もこのサイトで見ることができます。なお第12回ソウル大会から第19回ウィーン大会までのもようは、敬和学園大学のHPをご覧ください:www.keiwa-c.ac.jp/ipo/index.html

 

IPO日本組織委員会
北垣宗治(委員長、敬和学園大学元学長、同志社大学名誉教授)
延原時行(副委員長、敬和学園大学名誉教授)
林 貴啓(委員、立命館大学講師)

 

 

応募のしかた
次に挙げるA~Fのうち一つを選び、それについてあなたの考えを論理的に展開するエッセイを日本語(4000字~5000字程度)で書いてください。A4用紙で3~5枚程度の長さとします(原則としてワープロを使用してください。参加希望者でパソコンが使用できない環境にある場合、事前に委員会までお知らせください)。

哲学者や思想に関する「知識」よりも、どこまで自分の頭で考え抜いたか、その思索の末にどのような考え方にたどりついたのか、どのように自分の考えを根拠つけているか、といった点のほうが、「哲学すること」には大事です。評価も、そうした点を重視したいと思います。

応募する人はできるだけ早い段階で(できれば年内に)名乗りを挙げてください。つまり、エントリーです。名前、学校と学年、E-mail address, 電話番号を ktgk@hb.tp1.jp あて、メールで報告していただくだけです。ただしこのエントリーは応募するための必須条件ではありません。
従来の「全国高校哲学エッセイ・コンクール」では応募資格を中学3年、高校1, 2年生としてきましたが、その制限を撤廃し、すべての中学・高校生が応募できます。ただし、IPOオスロ大会に出場できるのは高校生のみです。

課  題


A. 倫理、あるいは道徳は、人間と動物との違いにまつわる、ある疑うべくもない事実に由来する。人間だけが世界のなかでの自分の位置を知っており、現在だけでなく過去や未来を、目の前にあるものだけでなく目の前にないものを考える能力を発達させているということである。それとともに、言語で他の人々と会話する能力もある。こうした能力は総称して、人間の想像力と呼んでよい。(メアリー・ウォーノック『知識人のための倫理学案内』)

B. 哲学が驚異に発するものである以上は、哲学のまず問題とすべき存在は可能的存在でもなければ、必然的存在でもなく、偶然的存在でなければならない。哲学は偶然的存在に対して「何故」の問いを発するのである。 (九鬼周造『人間と実存』)

C. 私は自ら努めて状況を変化させることができます。しかし私は死ななければならないとか、悩まねばならないとか、争わねばならないとか、偶然の手にゆだねられているとか、不可避的に罪に巻き込まれているなどというように、たとえ状況の一時的な現象が変化したり、状況の圧力が表面に現れなかったりすることがあっても、その本質においては変化しない状況というものが存在します。このような私たちの存在の状況を限界状況と呼ぶのです。すなわちそれは私たちが越え出ることもできないし、変化させることもできない状況が存在するということであって、これらの限界状況はかの驚きや懐疑についで、いっそう深い哲学の根源なのであります。  (ヤスパース『哲学入門』)

D. 君はくびきを脱することを許された者であるのか。世には、他者への服従の義務を投げ捨てたことによって、自分のもつ価値の最後のいっぺんを投げ捨ててしまった者が少なくないのだ。
「何からの自由?」そんなことには、ツァラトゥストラはなんの関心もない。君の目がわたしに明らかに告げねばならぬことは、「何を目ざしての自由か」ということだ。
(ニーチェ『ツァラトゥストラはかく語りき』)

E. だれかをその美しさのゆえに愛している者は、その人を愛しているのだろうか。いな。なぜなら、その人を殺さずにその美しさを殺すであろう天然痘は、彼がもはやその人を愛さないようにするだろうからである。   (パスカル『パンセ』)

F.  孔子が言われた。「由よ、お前に知るということを教えようか。知ったことは知ったこととし、知らないことは知らないこととする、それが知るということだ。」(『論語』)

 

課題の解説

A  ウォーノックは現代イギリスの哲学者で、想像力の研究で知られるとともに、生命倫理をめぐる「ウォーノック委員会」のリーダーを務めたり、哲学教育やさまざま社会問題への哲学的提言を発表したりするなど、哲学を現実社会との関わりで追求した人でもあります。この一節に触れて「倫理」「道徳」の意味と、それを可能にする人間固有の能力について考えてみる、というのがこの課題のテーマといえます。しばしば今日の社会道徳の低下の一因として「想像力の欠如」が指摘されるだけに、その意味でも現代的な内容です。

B. 九鬼周造は近代日本の哲学者。文化論『いきの構造』で名高いとともに、実存哲学を日本に導入した人としても知られています。九鬼が深い関心を寄せた哲学的なテーマの一つが「偶然」です。この世界や私たちのあり方には、大きく「偶然」が関わっている。それどころか、私たちの存在、ひいてはこの世界の存在そのものまでが巨大な偶然であるという洞察から、哲学を進めています。「偶然」「必然」の意味について、またそれを哲学するとはどういうことかについて、この一節を手がかりに考えてみるのもいいでしょう。

C. ヤスパースはドイツの実存哲学者。そのキーコンセプトのひとつである「限界状況」について述べたのがこの一節です。人間が人間であるかぎり、どうしても乗り越えることができない状況というのが存在する。どんなに科学技術を発達させても、豊かで公正な社会を築いても、そういった人間的な努力ではどうにも越えがたいもの。それに向き合うことに哲学の本分がある、という洞察です。科学技術がますます進歩し、人間の力に限りがないようにも錯覚されかねないこの時代だけに、「人間の限界」や「科学とは異なる、哲学の意義」について、この一節をもとに考えてみてもいいでしょう。

D. 白取春彦さんの『超訳 ニーチェの言葉』もベストセラーになり、すでに馴染みのある人も少なくないだろうドイツの哲学者・ニーチェ。この一節では「自由」と「服従」について語っています。「自由」は現代社会ではいちばん尊重される価値の一つであり、みなさんにとっても何より求めるもののひとつであることでしょう。ただここで問いかけているのはいわば「自由に値する人であること」です。なかなかこういった形で「自由」の意味が問われることもないだけに、みなさん自身の「自由」観とも対話しながら、この機会に考えてみることをおすすめします。否定的に見られがちな「服従」「従属」の意味についても改めて考えてみてください。

E.「パスカルの原理」や気圧の単位「ヘクトパスカル」にも名を残した物理学者・数学者のパスカルはまた、鋭敏なまなざしで人間と世界の機微をとらえ、その思索の成果を『パンセ』に数々の断章として綴った思想家でもありました。ここでは「愛」について触れた一節を課題として出してみました。毒舌が効いているのはご覧のとおりですが、「人を愛すること」について考えさせるものをもっています。人は普通に「~の…がいいから好き」と思い、言うでしょう。けれども、もし「…がいいから」の部分がなくなったとしたらどうなるか、とパスカルは問いかけているわけです。そしてまた、パスカルがここで述べたようなものとは異なる愛のかたちがあるとすればどのようなものなのか。哲学的に考えてみるのも興味深いはずです。

F.  「論語」は中国の春秋時代の学者・思想家で儒教の創始者である孔子と弟子たちの問答を中心に収録したものです。文中にある「由(ゆう)」は孔子の弟子の名前です。孔子は由に「知る」ことの意味を教えていますが、彼の考え方には、無知を装おうことから議論を始めたソクラテスと、一脈通ずるところがあると言えるかもしれません。

 

 

第一次選考と第二次選考
すでにお分かりのように、第一次選考の課題は日本語で出題し、解説をつけています。この第一次選考を通過した約10人の方は、第二次選考に進んで頂きます。それは英語で課題を出しますので、英語でエッセイを書いていただき、その審査に基づいてグランプリの最終結果を出すことになります。そして金賞を獲得した二人が、IPOのオスロ大会に出場していただきます。(なお、IPO国際大会では英語による課題文が与えられます。)

提出資料
エッセイには必ず、①選んだ課題の記号 ②氏名 ③住所と電話番号 ④E-mail address  ⑤学校名と学年 ⑥学校のアドレスと電話番号、を添付してください。また、よろしければ倫理や哲学に興味を持ったきっかけや今の関心、IPOをどのようにして知ったか、この国内選考にあたっての意気込み、なども書き添えてください。

エッセイ提出の締切は2012年1月31日です。(1月31日の消印があれば有効です)。

【郵  送】
〒102-0075 東京都千代田区三番町6-3
IPO日本組織委員会 『日本倫理・哲学グランプリ』係

【電子データ送付】
電子データによる同一のエッセイをktgk@hb.tp1.jp; ayashi@za2.so-net.ne.jp の二つのアドレスに、e-mail に添付してお送りください。電子データの締切は2月1日とします。
電子データのファイル名には、応募者のお名前を入れてくださるようお願いします
(例:「哲学太郎 日本倫理・哲学グランプリ課題」)。

選考結果
新しい事務局のHP に発表します。金賞(ノルウェーのオスロでの第20回国際大会への参加資格)2人、銀賞(1万円図書カード)2人、銅賞(5千円図書カード)3人を入賞者とし、当委員会から直接連絡します。

問合せ先
応募等についての質問は E-mail で ktgk@hb.tp1.jp へ、
哲学的内容についての質問は     ayashi@za2.so-net.ne.jp まで。

以 上

 


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