第10回国際哲学オリンピアード:報告
謝辞:
アジアではじめて開催された第十回国際哲学オリンピアードは、5月12日(日)から15日(水)までの全会期を大成功裡に無事終了いたしました。これに勇躍参加いただいた15カ国(アルゼンチン、ブルガリア、フィンランド、ドイツ、ハンガリー、イタリア、日本、韓国、リトアニア、ポーランド、ルーマニア、ロシア、スロベニア、トルコ、ウクライナ)の30名の代表高校生諸君、16カ国(前記諸国と米国)からの22名の引率教員・指導者・教育省等の係官各位、日本組織委員会(委員長:北垣宗治敬和学園大学学長)の委員各位、英知を傾けたご高説を賜った講演者(イオアンナ・クチュラーディ国際哲学会連盟会長;ハンス・ファンヒンケル国連大学学長;小和田恒日本国際問題研究所理事長;今道友信国際哲学センター所所長;ジョン・B・カブ:クレアモント大学院名誉教授、プロセス研究所所長;イングリッド・シェ―ファー:オクラホマ科学芸術大学教授)、「平和と対話」ワークショップに懇切丁寧な指導を頂いた先生方(カリーム・ベナマル前・神戸大学教授;花岡永子大阪府立大学教授;橋本典子青山学院大学教授;中西久枝名古屋大学教授)、国連大学の優秀なプログラム指導者(ビルギット・ポニアトフスキー博士、マックス・ボンド氏、エルス・クレース氏)、ボランティア奉仕者(延原信子師、中嶋野花氏、池田朋子氏、佐々木かおり氏、田中琢史氏、西間木公孝氏)の皆様に深甚の謝意を表します。
エッセイ・コンテスト結果:
30名の参加高校生は、世界の四人の代表的哲学者(プラトン、サンタヤーナ、ヴィットゲンシュタイン、西田幾多郎)の文章から一つを選んで四時間かけて哲学エッセイを書き上げました。直ちに採点委員会で厳正な審査をし、以下の結果をみました。
一等賞:シルヴィア・クルパーノ(イタリア) |
二等賞:クラウディア・クリスティーナ・セルバン(ルーマニア) |
三等賞:アクセ・ペッターソン(フィンランド) |
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一等賞は賞金200ドル、二等三等賞は賞金100ドルを授与。受賞者に会長より著書『地球時代の良寛:Ryokan in
a Global Age』を謹呈。全員に修了証書を授与した。
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名誉敢闘賞:デニズ・グンゼ・デミルヒサール(トルコ)
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四位:コンラッド・ムメルト(ドイツ) |
五位:パオロ・ストラーティ(イタリア) |
六位:アルジョーサ・ジェメック(スロベニア) |
七位:パトリシア・カシ−リンスカ(ポーランド) |
八位:フローレンシア・ディ・ロッコ(アルゼンチン) |
八位:ヘレナ・ソルヴァ(フィンランド) |
九位:マルク・パップ(ハンガリー) |
十位:フィリップ・ランプレヒト(ドイツ)
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以下、アルファベット順(順位ではない):
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カティンカ・アルマシー(ハンガリー)
シモ−ナ・アルミナイテ(リトアニア)
エフゲニー・バラノフ(ロシア)
カルガ・コメルト(トルコ)
井出まり子(日本)
ジェオン・ミョンフーン(韓国)
マグダレーナ・カレンバ(ポーランド)
金子 綾(日本)
キム・ジーヒエ(韓国)
ユリア・メルニク(ウクライナ)
中目 剛(日本)
リヴュ・ネデフ(ルーマニア)
ヴィクトリア・ノレイカイテ(リトアニア)
ダニエル・イリエフ・パネフ(ブルガリア)
マリア・ペトローヴァ・パショーヴァ(ブルガリア)
笹川綾香(日本)
山田恵子(日本)
ユーリ・ズラーヴェル(ウクライナ) |
各国代表引率者:
Argentina: |
Prof.
Eduardo Bianchini |
Bulgaria: |
Prof.
Ivan Kolev |
Finland: |
Mr.
Pekka Elo |
Germany: |
Dr.
Gerd Gerhardt |
Hungary: |
Dr.
Katalin Havas |
Italy: |
Prof.
Antonio Cosentino |
Japan: |
Prof.
Tokiyuki Nobuhara; Prof. Muneharu Kitagaki; Dr. Karim Benammar;
Prof. Eiko Hanaoka; Prof. Noriko Hashimoto; Prof. Hisae Nakanishi |
Korea: |
Dr.
Lee Ji-aeh |
Lithuania: |
Dr.
Jurate Baranova |
Poland: |
Prof.
Wladyslaw Krajewski; Prof. Michal Koss |
Romania: |
Prof.
Eugen Stoica; Prof. Elena Florina Otet |
Russia: |
Prof.
Vyacheslav Kudashov |
Slovenia: |
Prof.
Alenka Hladnik |
Turkey: |
Prof.
Nuran Direk |
Ukraine: |
Prof.
Nadiya Volodymyrivna Hnasevych |
USA: |
Dr.
Alexander Leeser |
講演の演題:
今回の第十回国際哲学オリンピアードは、高校生たちのエッセイ・コンテストだけではなく、世界を代表する識者の英知を主題「公正で対話的な人間社会に向けて:持続可能性、公民性、相互学習の探求」をめぐって開陳いただいたところに、特徴があります。すなわち、これからの文明の担い手と最高の文明の功労者との「相互内在」を図るとことに、文明の祭典が祝われる、という観点がこれです。文明の成果の受け継ぎと若い世代の冒険のないところに、グローバルな伝承過程はないことでしょう。
この過程の展開は、これから既存の三大学(敬和学園大学、国連大学、グローバル対話研究所)の間のインターネット・ホームページのリンケージをさらに強化、拡大、活性化する「a
Trans-national IPO-Affiliated Inter-University Network」(TIIN)の活動を通じて、さらに果たされていくことでしょう。すでに、ドイツ(Dr.
Gerd Gerhardt, Nordrhein-Westfalen: http://www.learn-line.nrw.de/nav/sekundarstufen/philosophiesii/)
とイタリア(Prof. Antonio Cosentino: http://www.filosofare.net/ipo/ipo_index.htm)から、TIINへの参加の意思と声援を頂いております。
従いまして、以下の演題の講演原稿は、講演者の許可を頂いて、TIINのwebsitesで公開してゆく所存です。それらが、主題をめぐって、この地球化時代にふさわしい文明の方向性と哲学教育の将来を浮彫りにするものであると信じるからです。必要ならば、TIINに関係する任意の諸大学のあいだでInter-University
joint seminar(s), joint lectureship(s), joint conference(s)を計画、実施することも視野に入れるべきでしょう。それは、私どもが、IPO運動の国際的、また国内的、促進をこれからさらに図るうえで、貴重な学術的保護者の役割を果たすことでしょう。
TIINは、ネットワークですが、そのための責任的事務局と致しまして、Peace and Dialogue on Earth Inter-University
Center(s)を地球中の各地に、必要に応じておくことも、考慮されるべきだと考えます。責任主体のないところに、ネットワークの地道で有効な活用は可能でないと信じるからです。ホワイトヘッドの有名な飛行機の比喩を借りて言えば、TIINは、哲学になくてならぬ「自由なイマジネーション」による天空への飛翔に当るでしょう。そしてPDE
Inter-University Center(s)は「着地」に該当いたしましょうか。こうした観点から、以下のX. IPOにおける講演の演題は、重要であります。
5月13日(月) |
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イオアンナ・クチュラーディ、FISP会長
「倫理へのアプローチ、倫理におけるアプローチ」
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5月14日(火) |
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ハンス・ファンヒンケル、国連大学学長
「対話と理解について」
小和田恒、日本国際問題研究所理事長
「地球化する世界における公正の問題に関する省察」
今道友信、国際哲学研究所所長
「正義と責任」
ジョン・B・カブ、クレアモント大学院大学名誉教授;プロセス研究所所長
「持続可能な社会」
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5月5日(水) |
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イオアンナ・クチュラーディ、FISP会長
「人権と平和」
イングリッド・シェイファー、オクラホマ科学芸術大学教授
「WWW上に大地を築く:グローバル対話の夜明けの時代」
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IPOの反響:
大会が終ってから、各地から反響を頂いております。先ず、参加した15カ国の高校生のみなさんから、メールの来ること、来ること。「東京に帰りたい。けれど、試験を消化しなくては」という声。引率教員、講演者の先生方からの感謝状も頂いております(特に、今日の小和田恒先生のメールは嬉しかったです)。「大成功」を謝す、と。大会後に献金を御送りくださる方が後をたちません。深謝いたします。この運動は、その射程がグローバルな運動ですから、はじめは(ここ日本では)からしだねのようでも、必ず大木と成ることでしょう。毎日新聞のIPO記事(5月22日付および6月7日付)はそれを予感させないでしょうか。
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