学長室だより
ダビデの物語・ダビデ王位継承史その16
不倫した相手をみごもらせてしまった王は、どう始末しようとしたのでしょう。ウリヤを家に帰るようにしむけた策が失敗した今、王は不倫の事実を消し去る別の策を思いついたのです。「翌朝、ダビデはヨアブにあてて書状をしたため、ウリヤに託した。書状には、『ウリヤを激しい戦いの最前線に出し、彼を残して退却し、戦死させよ』と書かれていた。町の様子を見張っていたヨアブは、強力な戦士がいると判断した辺りにウリヤを配置した」とサムエル記は伝えています(下11章14節~16節)。ウリヤを戦死させれば、姦通の事実は隠せると考えたのです。戦死させよと記した書状を本人に持たせ、ヨアブに届けさせています。絶頂期にあると、何をしても思い通りに事が進む、あるいは進めさせうると人は錯覚しやすいのです。これはダビデが絶頂に上りつめた時に起こした事件でした。美しい裸体を見てその女性を調べさせた時、ウリヤの妻であることが分かったのです。それを知っていて彼女を宮廷に召し寄せ、(無理強いして)彼女と床を共にしたのでしょう。それは権力者の姿そのものでした。
「町の者たちは出撃してヨアブの軍と戦い、ダビデの家臣と兵士から戦死者が出た。ヘト人ウリヤも死んだ」(17節)とテキストは語っています。ウリヤは戦死したのです。これで不倫のもみ消しは成功したのでしょうか。(鈴木 佳秀)