学長室だより

ルツとナオミ・その30

主なる神はルツとボアズに祝福を授けました。愛のドラマが行き着いた結末が、子供の誕生でした。「ナオミはその乳飲み子をふところに抱き上げ、養い育てた」と聖書は語ります(ルツ記4章16節)。ルツから生まれた子がエリメレクの亡くなった息子の名を継ぐのですが、人々はこの子をオベド(「〔神の〕しもべ」の意)と呼んだようです(17節)。ボアズとルツの子ですが、ボアズの息子としてよりも、法的には嫁のルツが産んだナオミの孫と位置づけられます。この子がエリメレクの土地の相続人となるからです。
ボアズにどのような利得があったというのでしょうか。オベドの父としてボアズはルツと共に彼の後見人になるのです。ボアズはルツと家庭を築き、ナオミを扶養しつつオベドを育て上げたのです。土地の分け前に心を向けるのでなく、ひたむきにルツを愛し、その愛を貫いたボアズの人柄をこのドラマは物語っています。
旧約聖書は、主なる神にひれ伏す人間を描いていると思われているようで、人間の思惑や人為的な判断、行動を越えて、神の見えざる働きかけが人々の心を動かし、真心に支えられた愛の成就を語っているのです。それが、読む人に感動を与えるのではないでしょうか。(鈴木 佳秀)