学長室だより

不思議な繋がりで

問題意識が通じるかもしれないと思った研究者はドイツ人で、ハイデルベルグ大学で学位を取得し、故ゲルハルト・フォン・ラートという『旧約聖書神学』を著した偉大な研究者の愛弟子で、ロルフ・クニーリムという人でした。初期の論文にはハイデルベルグ大学私講師という表記があり、彼のハビリタチオン(就職論文)が『罪の概念』という題で出版されていたのです。どこで教えているのかはわかりませんでした。どうせ行き当たりばったりの話だからと思っていましたので、懸命に調べたという訳ではありません。そのうちふと、彼の英文論文が目にとまったのです。クレアモント大学院大学(Claremont Graduate School, California)と表記されていました。
ドイツに留学するにはドイツ語がしゃべれないと駄目だからと半分諦めていたものですから、びっくりしました。なんだ、アメリカにいるのか。可能性がなくはないかもしれないなと、気持ちが少し前向きになったのです。でもまだ夢の話です。その報告に教授宅にうかがうと、「なにクレアモント、そこで最近学位を取得したひとが今、大学の副牧師をしているからすぐに会いに行きなさい」と言われました。「えっ」という気持ちで、会いに行ったのです。新約聖書学で、ロビンソンという世界的な研究者のもとで学位を取られた先生でした。大学院のパンフレットを手渡され、クレアモントの町の様子などを聞かせてくれました。クニーリム先生については、講義に出たことがないが、素晴らしい人なので、是非、行くといいと勧められたのです。(鈴木 佳秀)