学長室だより
ダビデの物語・ダビデ王位継承史その66
「ダビデ王は兵士に言った。『わたしもお前たちと共に出陣する。』兵士は言った。『出陣なさってはいけません。我々が逃げ出したとしても彼らは気にも留めないでしょうし、我々の半数が戦死しても気にも留めないでしょう。しかしあなたは我々の一万人にも等しい方です。今は町にとどまり、町から我々を助けてくださる方がよいのです。』『わたしはお前たちの目に良いと映ることをしよう』と王は言って、町の城門の傍らに立ち、兵士は皆、百人隊、千人隊となって出て行った。王はヨアブ、アビシャイ、イタイに命じた。『若者アブサロムを手荒には扱わないでくれ。』兵士は皆、アブサロムについて王が将軍たち全員に命じるのを聞いていた。」(サムエル記下18章2節b〜5節)
戦いのため山地を駆け巡ってきたダビデでしたから、兵士と共に戦いに出ることを望んだのでしょう。しかし森の中の戦いでは狙撃される心配があります。マハナイムには兵士たちの家族も避難していました。この城塞を守るのはもう一人の将軍ベナヤです。
部隊を率いる将軍たちに、ダビデは「若者アブサロムを手荒には扱わないでくれ」と命令を下しています。その言葉に万感の思いが溢れています。戦いを前に、将軍たちはこの命令をどう受けとめたでしょうか。難しい戦いを強いられたことは、確かです。兵士たちもそれを聞いていました。ダビデは、王として、出撃する兵士を城門の傍らに立って見送っています。息子の軍隊と戦いを交える父親の気持ちが、伝わってきます。(鈴木 佳秀)