学長室だより

ダビデの物語・プロローグその6

「ハンナが主の御前であまりにも長く祈っているので、エリは彼女の口もとを注意して見た」(サムエル記上1章12節)とあり、「ハンナは心のうちで祈っていたので、唇は動いていたが声は聞こえなかった」(13節)と聖書は語ります。
彼女が酒に酔っているものと勘違いし、エリは「いつまで酔っているのか。酔いをさましてきなさい」と注意を与えています(14節)。人々は様々な願いを胸に神殿に詣でて、祈りをささげていたのです。人に聞かれてはならないことを酔いにまかせて祈っている、と疑われたのでしょう。神を汚す行為がないよう彼は注意を払っていたのです。
ハンナは「いいえ、祭司様、違います。わたしは深い悩みを持った女です。ぶどう酒も強い酒も飲んではおりません。ただ、主の御前に心からの願いを注ぎ出しておりました。……今まで祈っていたのは、訴えたいこと、苦しいことが多くあるからです」(15節~16節)と応答しています。
「安心して帰りなさい。イスラエルの神が、あなたの乞い願うことをかなえてくださるように」(17節)とエリは語っていますが、これが後に歴史を変えることになるハンナとの出会いでした。祭司エリはまだ何も知りません。(鈴木 佳秀)