学長室だより

失敗した一科目

日本人に聖書が分かるのかと質問する者はいなくなりました。親しく声をかけてくれる友人が増えたことも事実でした。次の試験のため猛勉強が続きます。クニーリム先生の演習は金曜日の朝8時から12時まで。コーヒーブレイクが15分あるだけで、ヘブライ語聖書を読んで討論する演習で、この準備が大変でした。出エジプト記25章以下の様式史的研究で、内容は幕屋設営に関する神からモーセに与えられた指示でした。類型を摘出し、ジャンルを決定した上で、その社会学的な生の座を探るという演習なので、テキストを英訳し必要論文を読むという毎日でした。他の講義もあるので、寝る時間も惜しんでの戦いでした。
第二回目のテストに向けて、フランス語は英語の文法書で学習し直しました。教会史は、概説書を読み出題が予想される教義上の論争について、事前に小論文を書いてみました。哲学も、参考文献から出題される問題を逆に想定したのです。観念論か解釈学になると予想し、カントを中心に書くことにして準備をしました。最終にまわした倫理学は、哲学と似た問題であろうと思い、番外で受けてみることにしたのです。ほぼ想定された出題であったため、余力をもって執筆することができました。試験は13時から18時まで、辞書以外の持ち込み不可で、秘書が見守る部屋に閉じ込められ、好きなだけ時間を使っていいという方式でした。書けるだけ書けという格闘技そのものでした。結果は二回目もすべて合格でした。でも予備的に受けた倫理学は白紙でした。「ホモセクシャリズムについて論じなさい」という出題だったからです。(鈴木 佳秀)