学長室だより
不思議な連鎖
面談した新約聖書学の先生から、びっくりするようなことを言われました。隣の東京神学大学で旧約聖書を教えておられる故左近淑教授が、クニーリム先生の友人のはずですよというのです。アメリカに留学し、ユニオン神学校で学位を取得された研究者で、学会で遠くからお見かけしていた先生です。包囲網が狭められてきたと感じました。左近先生にも面会を申し入れ、相談にうかがいました。学ぶには最適の場所だからと強く勧められました。こんなことがたたみ掛けるように起こるなんて、と信じられない思いでした。現実のわたくしは、製麺工場で働きながら大学院に通い、塾の教師になるつもりでいたからです。
複数の先生から強く勧められましたので、要項を取り寄せアプリケーションを送ることにしたのです。関根先生に相談にうかがいました。先生は何と言われるだろうか、どきどきしながらお宅の呼び鈴を押したことを覚えています。関根先生も大賛成で、クニーリム教授がフォン・ラートの愛弟子でモーセの律法について研究していることをご存じでした。推薦状を書きましょうと言っていただいたのは大変嬉しかったのですが、もう後に引けなくなったのです。関根正雄先生と左近淑先生が推薦状を書いてくださいました。日本を代表する国際的な旧約学者二人の推薦状を手にできたこと自体が、奇蹟と呼べることであったかもしれません。
書類を郵送すると同時に、クニーリム教授宛に英文の手紙を書いて送りました。これまでどのような論文を読んできたのかを述べて、神顕現の様式史的研究がしたい、と書き送ったのです。返事が来ませんでした。(鈴木 佳秀)