学長室だより
2004年8月27日号
2年次生のひとりS君が自裁した。ご家族としては他人に知られたくないという思いが先にたったのであろう、今晩お通夜という日の午後になって、大学の事務室に、そのことを知らせてこられた。ほんの数名の者が、大学からは80キロほどはなれた古寺に参じた。
アドバイザーのY助教授もごいっしょであった。苦悶のご様子であった。以前にも自殺を口にしたことがあったらしい。そのたびに、Y先生は、「自殺は事の解決にはならない。深刻な体験を乗り越えた人びとで、その後、より深い生き方を送っているケースがある」と言って、励まされたという。それでも、この結果であった。数日たったあとに、同じブラスバンド部の仲間であったという青年男女が数名、学長室にやってきて、涙ながらに悲しさを吐露した。
この悲哀を一生の思い出として抱きつつ、S君がなすべくして、なし終えることのできなかった人生を生き抜いてゆこう、と励ました。(新井 明)