学長室だより
2008年1月18日号
1年次生のHさんが学長室に現れて、「兄の作品です」と言って、作品がプリントされている絵葉書をくださった。日本都市センター会館の緑道ギャラリーとある。行ったことはないが、JR四ツ谷駅を降りれば、間違いなく行けるところだ。東京までは月に1,2回は出なくてはならない身であるから、楽しみにしていた。11月下旬の一日、そこを訪ねた。都心の一角だが、小川が流れ、樹木が育ち、下草も茂る。里山の風情である。注意ぶかく歩かないと見過ごす大きさの彫刻が5点ほど。「声帯」、「I need you」、「かみつく赤」など。都会の緑陰に小さく生きる作品の数個が、それを凝視するたったひとりの男――まわりに誰もいない!―― に、この世を超越する安らぎを与えてくれる。先の予定を、うっかり忘れるところであった。
新潟の学園にもどって、Hさんに会ったときに、「あなたは観に行った?」と聞くと、まだです、と答えた。(新井 明)