学長室だより

ルツとナオミ・その2

ナオミがルツを伴ってベツレヘムに帰ってきた時、町の人は驚きました。ナオミさんではないですかと声をかけられた時、彼女はナオミ(「わたしの歓び、快い」の意)と呼ばないで下さい、全能者がわたしを不幸に落とされたのにと答えています(ルツ記1章20節~21節)。傷心の帰国だったからです。
それは大麦の刈り入れの始まる頃でした。ルツはナオミに「畑に行ってきます。だれか厚意を示してくださる方の後ろで、落ち穂を拾わせていただきます」と言うと、ナオミはルツに「わたしの娘よ、行っておいで」と彼女を送り出します。その日の糧を得なければならないからです。
ナオミがルツを「わたしの娘」と呼んでいます。嫁という意識を超えたところで彼女を愛し、受け容れていたことが分かります。落ち穂を拾うにも、邪魔されることは覚悟の上でした。自分がモアブの女であることをルツは自覚しています。落ち穂拾いで糧を得ている者は、だれでも落ち穂を少しでも多く集めるのに必死です。「だれか厚意を示してくださる方の後ろで」と彼女が語っているのは意味深長です。邪魔されても、ナオミのために落ち穂を拾い集めたいと彼女は願っていたからです。二人で共に生きていくためです。(鈴木 佳秀)