学長室だより

ルツとナオミ・その24

「一族エリメレクの所有する畑地」という言葉から、土地が私有財産であったとみなすことはできません。古代イスラエルでは、土地の私有化は制度として成立しなかったからです。土地は部族内に限りその権利を売ることができましたが、土地の管理権の譲渡に等しいものでした。遊牧民の伝統を継承し、最終的に土地は神の所有であるという観念を彼らが保持し続けたからです(レビ記25章23節)。土地を売り渡しても、それを買い戻す権利を放棄してはならないと規定しているのもそのためです。自分たちを、神の土地の上で生きる寄留者(旅人)であると理解していたからです。
土地の権利は一族の中で処理されなければならないものでした。門で呼びとめた親戚の男に、言葉を選びながら「もしあなたに責任を果たすおつもりがあるのでしたら、この裁きの座にいる人々と民の長老たちの前で買い取ってください。もし責任を果たせないのでしたら、わたしにそう言ってください。それならわたしが考えます。責任を負っている人はあなたのほかになく、わたしはその次の者ですから」とボアズは語っています。同じ一族の中でも、権利を引き継ぐ順序が決まっていたのです。緊張の瞬間が訪れます。(鈴木 佳秀)