学長室だより
ダビデの物語・ダビデ王位継承史その12
「年が改まり、王たちが出陣する時期になった。ダビデは、ヨアブとその指揮下においた自分の家臣、そしてイスラエルの全軍を送り出した。彼らはアンモン人を滅ぼし、ラバを包囲した。しかしダビデ自身はエルサレムにとどまっていた」(サムエル記下11章1節)と語るテキストは、王国が隣国の脅威を取り除き、最後まで敵対していたアンモンを討伐するところまでこぎ着けたことを物語ります。王が出陣する必要がないほど軍事力は強化され、傭兵部隊に加えイスラエル召集軍も動員されていたことを示しています。召集軍が常備軍に組み込まれている事実は、過小評価すべきではありません。自主的な従軍であった召集軍が、徴兵制に限りなく近似したものとなっていたからです。契約でダビデが王に即位した経緯がありますので、部族の者たちは王の命令に従わざるを得なくなったのです。ダビデの国家は、内政的にも外交的にも確固とした地位を確立させ、敵対勢力を排除するところまで来ていました。アンモンを攻略するため、王は精鋭部隊を送り、首都のラバ〔現在のアンマン〕を包囲させたのです。
「ある日の夕暮れに、ダビデは午睡から起きて、王宮の屋上を散歩していた。彼は屋上から、一人の女が水を浴びているのを目に留めた。女は大層美しかった」(2節)とあります。事件はこの時に起こりました。(鈴木 佳秀)