学長室だより

ダビデの物語・ダビデ王位継承史その25

断食し地面に横たわっていたダビデですが「だが死んでしまった。断食したところで、何になろう。あの子を呼び戻せようか。わたしはいずれあの子のところに行く。しかし、あの子がわたしのもとに帰って来ることはない」(サムエル記下12章23節)と語る言葉に、痛切な思いがこもっています。愛する子を失った父親の悲しみが溢れています。彼はバト・シェバをどのように処遇したのでしょうか。
「ダビデは妻バト・シェバを慰め、彼女のところに行って床を共にした。バト・シェバは男の子を産み、ダビデはその子をソロモンと名付けた」(24節)とあり、王は恥辱の相手であるバト・シェバを捨て去ることはしませんでした。内外に噂になった女性を、離縁せずに宮廷に留め、妻として処遇し、男の子が与えられたというのです。スキャンダルの結末を考える際、ダビデ夫妻を、現代のセレブやスターたちとどうしても比較してしまいます。恥辱の関係となった相手に責めを負わせ、離婚し、もう関わりがないとうそぶく光景がよく見られるからです。神の裁きを潔く受けたダビデは、人間としての尊厳まで投げ捨てることはしなかったのです。不倫の相手をさせられ、夫を失い、母親としてわが子の死を悲しんでいたバト・シェバですが、ダビデは彼女を慰め、夫として愛の道を貫いているのです。生まれたのがソロモンでした。(鈴木 佳秀)